市瀬由々の由々しき事件簿

〝――二番目に怖いものって何かしら？〟

　市瀬探偵事務所に就職して、早くも半年が経過した。
　やってくる〝奇妙な依頼人〟にも慣れ始めたある日のことである。市瀬探偵事務所に持ち込まれた〝依頼〟――

　それは、たとえば――凶報を知らせる妖怪のことである。
　あるいは――ひとりの少女による呪いのことである。
　あるいは――見てはならない真実のことである。
　あるいは――存在しないはずの土地のことである。
　あるいは――継がれ続ける祟り神のことである。
　あるいは――罪深い入れ子細工のことである。
　あるいは――積み重ねた恨みの木乃伊のことである。

　――そんな調査に、僕こと川原亡令と、市瀬探偵事務所所長の市瀬由々のふたりは山奥にまでやってきていた。
　僕たちがやってきたのは――かつてダムに沈…続きを読む