第9話/友達の友達から
9.
「――これらすべては真実ではない」
由々さんは、直前まで話していた花子さんの話をすべて否定した。
「それはどういう――ええっと、作り話ということですか?」
「その詳細もわからない。本当にそういう少女はいたかもしれない。でも、少なくともトイレの花子さんは『実験』によって作られた怪談よ。友達の友達から聞いた――Friend of a Friend(フレンド・オブ・ア・フレンド)。通称、FOAF。人間の噂によってどれほど情報が広がるのかという実験。口裂け女もその類いのものね。これによって生まれたのが『トイレの花子さん』という有名な怪談なのよ。この花子さんの場合は、一九五〇年代に実験として流布された『三番目の花子さん』という怪談をモデルにして、次第に広がっていき、一九八〇年代には子供たちの間で噂になった。少なくとも、トイレの花子さんという怪異はそういう怪異。人間の手によって広められた――どれほど広がるかを実験して試された怪談」
「作られた怪異なら、脅威になることなんてないんじゃないですか?」
「とんでもない。問題はどれだけの人によって認知されているか、なのよ。何かしらの事件、あるいは事故が起きて、人が死んだ。それはなんてことのない事故だったかもしれない。それを、人が認識して『トイレの花子さん』だと捉えられてしまった場合、どうなると思う?」
なんでもなかったひとりの女の子が。
トイレの花子さんという怪談に、当て嵌められる。
「……その子が、トイレの花子さんになる?」
そういうこと。
と、由々さんは頷く。
「トイレの花子さんという少女はいなくても、そうじゃない誰かがトイレの花子さんになる。こうしてトイレの花子さんは後天的に実在する話になってしまったのよ」
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