第6話/長谷川花子
6.
「トイレの花子さんについて知っているかしら?」
ここで一度、時系列が随分と前に戻る。具体的には県立花宴学園初等部に這入る前のことである。
市瀬由々さんとの打ち合わせ。
同時に、トイレの花子さんに関しての情報共有を行った。
「最も有名な怪談といっても過言ではないこのトイレの花子さん。詳細は地域で異なるけれど、大体は三番目のトイレをノックして出てくる怪異よ。わたしたちは、県立花宴学園初等部で囁かれているトイレの花子さんの噂がどういうものなのか調べるのが、今回の仕事よ」
「トイレの花子さんに関して、いろいろと話は聞いたことはありますけど、そもそもトイレの花子さんってどこからきた話なんですか?」
僕だって小学校、中学校、高校と人生を歩んできた。
その中で、トイレの花子さんに関する怪談を耳にしたことはある。きっと、全国のありとあらゆる学校に類似した噂があるのではないだろうか。
ならば。
これほどまでの知名度を誇っているトイレの花子さんは、一体どうしてこれほどまでに広まっているのだろうか? というのも当然の疑問である。
「そうね、まずトイレの花子さんについて解説する必要があるわね」
由々さんは説明を始める。
「トイレの花子さんそのものには様々な逸話が存在していて、その由来となる原典はどれなのか不明といっても過言ではないわ。そんな中でも、有力なものもある。怪談になる前の生前の人物像では、本名を長谷川花子と言って、明治十二年に生を受けた――とされている」
「明治十二年って……ええっと、西暦一八八〇年辺りですか?」
「惜しい。西暦一八七九年ね。長谷川花子という名前は共通だけど、所説はいろいろとある。不審者に追いかけられていて、学校に逃げ込んだところを殺されたというものもあれば、苛めに遭っていたというのもある――」
でも。
この話はそれだけの話じゃないのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます