第6話/厄災を告げる
6.
土着信仰の類いだったのだろう。かつてダムに沈んだ村。そこで『くだん』が生まれた。この『くだん』の予言を聞いて、村人は過ごしてきた。そんなある日のことだった――『くだん』は、村の崩壊を告げた。すぐにダム建設の話は村にきた。この予言を聞いていた村人は既に転居の準備をしていた。できていた。
こうして村人は別の地に移った。
転居先で土着信仰の再開は画策されていた――が、できなかった。突然発生した『くだん』は、突然死去した。
それもそうだ。
『くだん』とは凶事の前兆として生まれてくる怪異だ。その凶報を告げることが『くだん』の役割だ。その凶事が済めば死亡する怪異だ。
これを知らなかった。
これでも焦ったのは『くだん』を所有して、土着信仰を行っていた家の連中だった。
これでは、村人から採取が途絶えてしまう。
いいや、『くだん』を死なせてしまったと責められるだろう。これを恐れた。
だから――偽った。偽り続けた。
これは、およそ第二次世界大戦より十年前のことである。その後は幾度となく、場所を変えて移動を続けた。
外部からの干渉を受けないように、と。
時代も時代だった。
第二次世界大戦が終わり、冷戦期に入った頃の出来事だった。それから少しずつ、この村は衰退していった。
反映は衰えるし、信仰と銘打った採取はとどまることなかった――と、市瀬由々は語る。
転居を繰り返して、行き着いた先がこの村――総角村がダムに沈んで、転居し、転居し、転居し、転居した先がこの村。この村で最も大きい屋敷を調べた末に、僕たちは地下室にまでやってきた。何もないがらんどう。そんな地下室にある唯一。祠のようなものがあり、上々な
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