第29話 いちごオレ

 ぐびり。


 「甘味が足りないんじゃないかなー?」


 『練乳であまさを付けているので、丁度良いかと?』


 「いや。いちごオレのことじゃなくて、星にだよー。」


 『星にですか?』


 「うん。お茶だったから、この星がゴブリンだらけになったのかなーと。だから、今飲んでいるいちごオレを入れたら、丁度いいかなーと。」


 『灯台下暗しですね。その考えはありませんでした!素晴らしいです!ただし、何が起こるかわかりませんので、私の方で一滴だけ落としてみます。』


 「選択さん。お願い!」


 白い空間にピンクの液体が1滴生まれ、ガラス板に吸い込まれ海に向かって落ちていく。海に触れるかと思った時、黒くて巨大な魚が飛び跳ねて、ピンクの液体を丸吞みにしてしまった。


 「?!」『?!』


 黒かった魚は、赤と白のまだらが浮かび上がり錦鯉のような模様に変化し、更にブクブクと元の5倍を超える3キロメートルもの体長になるとビタン!ビタン!と飛び跳ね回り始める。


 錦鯉が飛び跳ねるたびに、海は荒れ大渦や津波を巻き起こす。


 「選択さん!どうしよう?!どうしよう?!」


 『お、落ち着いてください!アレはゴブリンとグレートホエールの交配で生まれた生物でした!何か手を考えましょう!』


 「アレで何とかならない?!」


 錦鯉は陸に飛び上がり、何百キロもの距離を飛び跳ねながら大地にクレータや亀裂を作って、嵐のような砂煙をあげていく。成長はいまだに止まらなく7キロメートルもの体長になっている。多くの町や国を叩き潰し、ビタン!ビタン!と飛び跳ねる。最強種のドラゴンでさえ、気づく間もなく葬り去っていく。


 『飛躍スキルで宇宙にぶっ飛ばしましょう!どうでしょうか?!』


 Yes or No


 「イエース!!!!」


 錦鯉が大きく尾を振るうと、大地にこれまで以上のクレータを作り、もの凄い速度で大気圏を突破して宇宙へと飛びたって行く。


 『な、なんとか、なりました。知的生物たちは、今日のことを大量の星が降り注いだ星降りの日と言っているので、星降りの日とします。』


 「うん。そうしよー。あ?…選択さん。」


 『?』


 「時間停止ストップ…使えばよかったね…。」


 『…。』


 あー、いちごオレのやさしい甘さが心に染みるー。

 それから3年間、錦鯉が巻き上げた砂ぼこりで陽の光が遮られ、星は氷に閉ざされた。

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