第15話 風の恵み
「迷いの森の様子がおかしいよね?エルフの土偶がますます不気味になってるし…。」
『はい。土偶は植物の種を土に混ぜて練りこみ、魔力を込めながら形を作り、陰干しで乾かして森を囲うように配置します。土偶に混ざった種が土偶の目や鼻、脇や尻などの弱い部分から芽吹き、魔力の影響で土偶と渾然一体となって成長します。』
不気味だよー。めちゃくちゃ不気味だよー。
「それを数千年の間、飽きもせず作り続けたのかー。土偶を飲み込みながら森もひろがるから迷いの森じゃなくて呪いの森だよ。まったく、エルフって不気味な種族だねー。」
『運命様。エルフは土偶のこと以外は、とてもすばらしい種族なんです。たとえば畑を誕生させました。畑は植物を育て食料を安定供給する技術です。それに唯一成功している種族です。』
「確かに戦いに明け暮れてないし、温厚な種族なんだけどねー。あれ?森の端にある高台から土偶を投げてるよ。不気味な土偶を嫌うエルフも出たのかな?」
『違います。あれは投げる専用の土偶、投げ土偶です。もちろん種付きです。しかも、1万キロ以上飛ぶこともあります。』
「なぜに?!平べったいとはいえ、土の塊だよ?!」
『エルフも祈っています。風の精霊に。種を運び豊穣のめぐみをと。』
僕に祈ろうよ。すねるよ?
「そっかー。畑って何作ってるの?」
『いろいろですが、主に米と麦でしょうか。』
米?酒?麦?焼酎?
「ってことは、お酒あるの?」
「まだ、ありません。」
『うそーん。』
「本当です。エルフは真面目な種族なんです。お酒を造って、現実を逃避しようとは思わないんでしょうね。」
「ふふふ。それは、酒の味を知らないからだよ。アレいきましょー!」
『わかりました。では、発酵スキルを与えてはどうでしょうか?』
Yes or No
「イエース!さぁ!見せるがよい!エルフの本性を!」
『お酢が誕生しました。』
『ザワークラフトが誕生しました。』
『ピクルスが誕生しました。』
『納豆が誕生しました。』
『ぬか漬けが誕生しました。』
『味噌が誕生しました。』
『醤油が誕生しました。』
『キムチが誕生しました。』
うそーん。酒がこない…。
『みりんが誕生しました。』
おしい!!!!!
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