第11話 それぞれの役割
「ブレイク……話がある」
「ああ?」
同じ過ちを繰り返すのはいけない。
そのために、ひつぎは歩きながらずっと考えていたことをブレイクに話すため、ブレイクの黒いジャージの裾を軽く引く。さっきと同じ公園であゆりとの接触をすませた後。
もっしゃもっしゃと卵サンドを食らい、ずーずー牛乳をすすっているブレイクが口の中を膨らませながら音をたてて呑みこむ。ジャージの裾を引っ張ったひつぎへと視線を下げる。
「なんだよ?」
「あゆりって……人のこと」
「ああ。で?」
「あの人……わたしに『殺しに来たよ』って言ってた。でも、わたしが怪我したのは足だった。でも武器の名前は『絶対命中の三又鉾』。ってことは、絶対に命中できるけど、場所までは決められないんじゃないかなって」
絶対命中。その言葉だけを聞けば確かに場所まで指定できると思いがちだがそうではないのではないのか? ということだった。
あと、もう一つ。
「……ブレイク。ブレイクの斧は不錆不壊の斧であってる?」
「おう。たぶんそんな名前だった気がするけどよ、それが?」
「三又鉾と戦った時……変な感じしなかった?」
「……そう言われてみりゃあ、なんか変な感じしたな。避けようとしてるっつーか、みしみし? いってた」
その言葉を聞いた時、ひつぎの中にやっぱりといった感情が浮かぶ。やっぱり、ひつぎの仮定はあっているのかもしれない。パンの紙袋を漁ってサンドイッチを取り出してまた食べ始めたブレイクにその話をすると、大きく左目を見開いてにんまりと嗤った。
それにさっき会話の途中で夢花の首ははねられてしまったが、確かに「はじめまして」と言っていた。ということはだ。記憶の継承は贄だけに与えられたものなのでは? とひつぎはもう1つの大事なことをブレイクに伝えたところで。
「ひつぎ、てめえ頭いいなあ」
「……そんなことない」
「俺はバカだからよぉそういうのはわかんねえ。でもお前が頭いいのはわかるぜ。……だからそうだな、こうしようぜ」
「……?」
首を傾げたひつぎに、ブレイクが不敵に笑いかける。
「この『神の作った箱庭』から出たら、てめえは俺に名前の書き方を教える。そのかわり、それまで俺が守ってやるよ。俺は弱いものいじめを無視するイカレタ大人じゃないからな! それに正直、1人だと生きて出れそうもねえし」
「……それで、ブレイクはいいの?」
「ああ? 男は1度言ったことは曲げねえんだよ。常識だろうが」
「……そんな常識、聞いたことない」
どこまで、どこまでひつぎに救いの手を伸ばしてくれるのだろうかと、一瞬泣きそうになりながら。ひつぎは小さく笑ったのだった。
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