第7話 あけました

 年が明け、親に給料が出てない事実を心配された頃。

 既に口座残高から瀕死の音が聞こえかけていた俺だったが、それでもNさんとともに我らが店で海鮮丼を食っていた。

「年明けくらいは贅沢しなくちゃな」

 Nさんは言う。全くもってその通りだ。

 だが、そんなことより給料を出してくれ。

 互いに給料が出てないもんだから、辛くてもそれは言い出せない。


 ここを乗り切れば―――。

 あるかもわからない未来のために、二人の大人は何故か働いていた。

 それが例え、閑散期の一月だとしても。

 それが例え、食べログもぐるナビも止まって電話もならなくなった店だとしても。


 まあそんな訳で、一月も平常発進となった。

 金は出ない、やることはやる、上からは怒られる。

 今考えてもよく精神を病まなかったなと思う。根が捻くれ曲がって、元々病み気味だったのが功を奏したのかもしれない。全然奏してねーよ!?


 まあ長期的な苦痛には慣れていたのか何なのか、幸いにも病むことも無く、一月を乗り切ろうとしていた俺。そうして二月三月も特に大きなことも無く、俺の精神を痛めつけるだけで日々は終わっていく。

 勿論、給料は出ない。

 おかしい、俺はただのバイトのはずなのになぜだ……。

 

 そうして俺の口座の残高が3桁を切り掛けるという究極のステージに到達した頃、一筋の光が差し込むのだった。

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