第4話 それは無いでしょ……!?
バイトを始め、月日はもう、九月が過ぎようとする頃。
人は給料日のために鎬を削って社会で戦っているわけだが――。
その給料日、俺の口座に入ってた額は八月が多少の出勤数だったことを踏まえても、何か少なかった。
流石の俺もおかしいと首を傾げる。
そこで社長から連絡が入る。
「ちょっと分割になる」
そっかー、分割かー、まあ入るなら……。
貯金を食いつぶしながら動いていた俺ではあったが、それでもほんのちょっとだけ、ひと月だけなら耐えられる程度は貯えがある。
実際、八月分はすぐに満額出たので気にしないようにしていたものの、その目を逸らしていた「この会社、金が無いのでは……?」という事実は、すぐに再び俺へと襲い掛かった。
十月末。もういちいち仕事の細かいあーだこーだを書いても仕方ないのですっ飛ばすが、十月末までゲームによるストレス発散とPBWのシナリオバイトで、何とか心を保っていた俺は、当然のように給料を確かめにATMへ駆け込む。
朝夜働き詰めでろくに金も使っていなとなれば、少しは貯まる。
そして振込を確かめた俺は愕然とする……。
給料が入ってないやん!?
いやいやいや。いやいやいやいやいやいや。
前の働いていたディスカウントストアのFC店も大概グレーな感じだったけど、それでもまだちゃんと給料は出してたよ?
給料が出ないってどういうことよwwwwww先月Nさんへの立ち回りのためだけに買ったゲームの支払いが重くのしかかってくるんだけどwwwwwww世に金を出せない企業とかあっていいのwwwwwwwwwwwwwww
最早、草を生やすことしか出来ない俺は、社長に電話するも「ごめん、遅れる。なるべく早く入れる」と一言。
違うねん。遅れる遅れないじゃないねん。
社会は金無しでは生きていけないねん……。
ちなみに、この早く入れるという話だが、結局振り込みは無かった。家賃分だけなんとか徴収したものの、その後はほとんど追加の振り込みもなく終わった。そんな記憶がある。
いや……ダメだろ……。
常識的に考えて……。
***
勿論、そんな労基案件の最中でも、仕事はしなくてはいけない。
金は出ずとも仕事はしよう。しないといけないのだ。うん。
休みなく働き残業代も出さない……という意味でブラック企業という言葉が使われるが、休みはあっても精神的・金銭的に人間を侵略してくるブラック企業があるとは。
ベンチャーという言葉に隠された深い闇を垣間見つつも、俺はやはり働いた。
なぜ働いたのか。
結局のところ、自分のせいでこうなったという自責の念というか、自業自得ぶりを胸の内に抱えていたから、我慢したのだろう。
自分のことながらよくわからんことも多いけども、他にあるのは、この時地味に他の職に就くことにまた失敗していることも遠因だろうか。
すっかり自信喪失し、職に就くことを諦めた俺は、このままここで働けばどこかで光が見いだせるかもしれないという、何とも救いようのない勘違いした。
金も出ないのに働くと言うのは、実際キツい。
それでも尚働く俺に、取り敢えず三度目の試練は訪れるのだった。
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