第6話 冬の貯え、そして厳冬

 十二月。飲食最大の繁忙期。

 全テーブル、カウンターが埋まることもしょっちゅうとなっていたこの時期、既に俺は予約対応まで割り振られ、パンク寸前だった。

 Nさんのような社員組も同様にほぼほぼ給料も出ていないため、本人も仕事に関してはあまりやる気がなく、任せられることは任せたいという姿勢だった。


 別にそれはいい。俺も慮ろう。

 ただ、予約の取り方から何まで徹底して教え込み、少しのミス取りも許さない、予約の取り過ぎによるパンクも許さないという徹底ぶり、そして自分の気分による文句の言いぶりは、やはり目に余るところがある。

 それでもひたすらに堪えて、何とか十二月も乗り越えようとしていた。

 三度目の試練を乗り切り、俺は何とか店を守り切ったのである。


 この頃、別途持っていたPBWの方で大型案件を振って貰うことが出来、収入の無い俺は藁にも縋る思いでこれに飛びついた。

 先方には感謝してもし足りない。

 このおかげでろくな収入が無くとも何とか冬を越せたものの、今考えても酷い本末転倒というか、何かがおかしい問題である。


 ちなみに、社長の誕生日パーティーをうちの店で行ったりもした。

(いや、パーティーとかする前に金を払えよ……)

 と誰もが思う所もかもしれないが、まあ年に一度の祝い事だから許してあげて欲しい。

 ただ、諸々の問題を済ませない内から金をバーッと使ってる節があるのはダメだろの極みである。

 実際、慎ましやかに店で飲みまくった後、結局カラオケと寿司で金が吹き飛んだ。バカ野郎。

 それを止めない俺もバカである。だが無理だ。止められるわけが無い。

 このイベント金に関しての葛藤は結局辞めるまで続いた。

 イベントするのはいいんだけどね……。うん……。


 まあ、それはさておき、それでもここから冬を乗り越えれば、きっと何か待つモノがある。


 そう考えていた俺を待っていたのは、まあ言うまでもなく残額が目減りするだけの通帳だったのだが、最早それは言うまでもないことだったよね?

 いやいや、ここまで来て金がただ入ってるだけならねwww終わっちゃうからwww

 これがフィクションじゃないのが笑えるぜ。

 おかしいだろ……俺の通帳の残高……もう死にそうなんだぜ……?(泣きがマジで入ってきてる)


 一応、救いだったのは年末年始は休みが多かったことだ。

 Nさんの働きたくないという鶴の一声で、休みを取れたので、そこだけは本当に助かった。

 まあだからと言って、新年に何か希望を残せるかと言うと、全く残せないのだが……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る