俺がバイトを失った日
品格3
第1話 さらば、仕事よ
2018年5月26日土曜日早朝。
バイト先の店長から連絡があった。
『給料入んないからもう朝の仕事したくない。どっか行ってくる』
なるほど。俺に逆らう権利はないし、俺も状況に心底嫌気がさしていたので、その言葉に『わかりました』と素直な返事を送った。
バイトの俺にすら金を払えず困窮している会社だ。働いたところでドン詰まり。
未来があるかはさっぱりわからない。
義理でつきあってきたが俺も限界だった。
『俺も今日は全休します』
もう一度言おう。
2018年5月26日土曜日早朝。
バイト先の店長から連絡があった。
それから俺は一日休むと告げた後、店を捨てて既に三日ほど休んでる。
バイトを失った日である。
***
事の始まり。俺が働きだしたのは2016年の夏だった。
それまでディスカウントストアのレジ打ちをしながら、仕事を探そうという建前を掲げて動き出せずにいた俺に、正社員になれるという話が知人から来た。
読んで字のごとく知人だ。深い付き合いは無い。
高校を中退したり紆余曲折を経ながらなんとか専門学校を卒業したものの、とにかく人生の半端物コースに入ってしまったことで、どこかの漫画の天パのごとく何もかもに死んだ魚の目しか向けられなくなっていた俺からすれば、渡りに船だった。
給料入って休みも取れて安定するならなんだっていいさと思ってた。
当時、シナリオライターになりたいとわめきながらも、「小説家になろう」でほそぼそ小説を投稿するくらいしか出来ていなかった自分にとっても、創作を趣味と割り切るいいチャンスだった。
で、運命の日。ガチガチになりながらも紹介された大手企業の面接に向かった。
想像以上にデカくて驚いた。結構CMでもやってんじゃんとか思った。
そして、見事に社長との面接に失敗し、俺は道を失った。
アホの極みである。
ここで成功せず失敗してしまう辺りに、何もしてこなかった人間のハイパワーなダメぶりを感じる。
言い訳は出来ない。これに関しては俺が本当に駄目人間だったせいである。
しかし、その後俺は、知人としていた「もしも失敗した時の話」にコロッと騙されてしまう。
これがここ一年ちょっとの激動の始まりであった。
カッコつけて書いてるが、ぶっちゃけただの底辺者の失敗話である。
大いに憐れみ、大いに笑いながら読んでやってください。
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