第35話「決戦2」

『主様、右だ!』

「ぐっ!」


 ギリギリの所で攻撃をかわしていく。

 相手は予想以上に強敵だった。

 でかい割に動きが素早い。このドグマ・キャッスルとかいう魔獣ビースト……中々の完成度だ。


「ふふふ、さすがの解放者リベレーターも苦戦しているようね」

「当たり前です。この私が世界各国から集めた準1等級の魔獣標本ビーストレコードを駆使して作った傑作なのですから」

「ファックス、あなたには本当に感謝をしているわ。これでようやく私の野望が叶えられる……」

「それは私も嬉しく存じます」

「ふふっ……さぁドグマ・キャッスル! あの少年を完膚なきまでに叩きのめしなさい!」


「ぎゅああああああああああああああああああああああああ!」


「ちっ……どんどん魔力が高まっていやがる」

『今はあいつの特性を知るのが先だな。あんときのギガンテス同様、弱点や攻略方法が分からない以上、不用意には動けん』

「そうだな。もう少し様子見が必要みたいだ」


 荒れ狂う化け物の猛攻。周りの研究所諸共、破壊を繰り返す。

 だが、俺はそれを見切るかのようにかわしていく。

 身体が慣れてきた。相手の行動パターンが読めてきている。


「なるほどな。大体分かった気がする」

『ああ、あとは攻略方法だな』


 正直、L8級魔術≪煉獄の槍≫を放てばワンパンなのだろうが、研究所ごと燃えてしまうため使うのは避けたい。

 かといってヴィーレの力を解放すると余計被害が出る可能性がある。

 地下と言っても王都の敷地内だ。地上には一般市民もいるわけなのでバカな真似は出来ない。

 とりあえずちょこちょこ攻撃して一番被害が最小限に抑えられる勝ち方をしたい。


「さて……どうしたものかね」


 攻略方法について悩んでいると後ろからアルベルトの声が。


「リュウタロウ殿ー!」

「アルベルトさん! 勝ったんですね、さすがです!」

「まぁ苦戦はしたけどな」


「あら、速かったじゃない。ミンスリーの親衛隊長さん。さすがにゴルクを倒すとは予想以上だったわ」

「力量を見誤ったなスノープリンス。あとはお前を地獄に葬り去るだけだ」

「やれるものならやってみなさい! ドグマ・キャッスル、もう一人追加よ」


「グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」


 アルベルトは見たこともない化け物を目の前にして、


「こんな奴まで隠し持っていたのか。こりゃ参ったな」

「アルベルトさん、加勢をお願いします。まだ攻略方法が分かっていないんです」

「もちろんだとも。逆にこちらからお願いしようと思っていたところだ」


 俺はアルベルトに奴の行動パターンやその他の言える範囲の情報を伝える。


「なるほど……分かった。俺なりに模索してみよう」

「助かります!」

「それじゃあ行くぞ!」


 反撃開始。とりあえず攻撃をかわしつつ、手当たり次第攻撃をしてみる。


「はぁーーーー!」


 ―――ガシン!


「くっ……なんて硬さだ」


 体制を整え、距離を置く。


「L5級ソードスキル……『光臨抜刀シャイニング・ブレイド!』」


 アルベルトが放った一撃は命中。だが、その攻撃ははじき返される。

 この感覚はギガンテスの時と似ている。

 おそらくある一点を攻撃すると有効なのかもしれない。

 それなら……


 俺が次に狙ったのは頭部部分。ここをやられるとさすがにくるだろう。


「フライ!」


 高く舞い上がる。だが、相手の対処も早い。すぐさま防御態勢を取る。

 俺の振りかぶった一撃は防御され、隙ができる。

 相手にとっては絶好の反撃チャンスだ。


「まずい……! 転移テレポーテーション!」


 ふぅ……危なかった。さすがに今のを喰らっていたらまずかったな。


「無事か、リュウタロウ殿」

「はい、大丈夫ですよ」

「くそ、未だに掴めん」

「そうですね。弱点さえ分かればいいのですが……」


 すると背後から、


「その魔獣ビーストの弱点は姉さんそのものです!」

「……!?」


 聞き覚えのある声が背後から聞こえる。


「リュウタロウ無事ー?」

「リュウタロウ様ー」

「助けにきましたー」


「アイリス!? ミルとイルーナ、それにミンスリー姫も」

「姫様、一体どうやってここを……?」

「詳しい話は後回しです。まずはドグマを倒すことに専念しましょう」


 まさか姫様自らここまで来るとは思ってもいなかった。

 

「一体どういうことだ、アイリス」

「ま、まぁちょっと色々あってね……」


 ミンスリーの姿を見てプリシアが姿を見せる。


「あら、これはこれは可愛い妹、ミンスリーじゃないですか」

「お姉様、もうこんなことはやめてください。貴方は間違っています」

「間違っているですって? 私からお父様を奪ったことも知らないで」

「お父様を奪った……?」

「ええ、そうよ。貴方に自覚なんてないかもしれないけどね!」

「でもそんなことで……」

「そんなこと……ですって?」


 プリシアはミンスリーに凄まじい剣幕で睨む。


「私が……私がどんな思いでこれまでを過ごしてきたか……」


 彼女はこれまで貯めてきた多くの思いをミンスリーにぶつける。


「あんたさえいなければ私はこんな……こんな惨めで悲しい思いなんてしなかったのよ!」

「……お姉さま」

「でも、あの時の屈辱があるから今の私がある。自分でも気に入っているの。今のワタシ……」

「それでも、お姉さまのしていることは!」

「うるさい! もうあんたに話すことなんてないわ。大人しく消えなさい!」


 彼女の操るドグマ・キャッスルが再度始動。



 そして攻撃はミンスリーへと襲い掛かる。

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