第5話「襲撃」
騎士団本部を訪れた後、俺はアイリスに導かれ王都を案内してもらっていた。
様々な種族が交わって共存している世界……これぞ異世界の醍醐味だ。
「リュウタロウ~こっちこっち」
アイリスがこちらに手を振る。もうすっかり馴染んできていた。
「こんな美少女と異世界の王都を一緒に歩く日がくるなんて……」
俺は今起こっている感動を噛みしめた。
だが、一つだけ難点があった。
それはそう、字が全く読めんのだ。
何が書いてあるのかも分からない。
今更字が読めないんです俺だなんて恥ずかしいことは言えない。
(ん? じゃあなぜ俺はこの子の言っていることが分かるんだ? それに周りの人の会話の内容も聞き取れる)
「な、なあアイリス」
「ん、どうかした?」
「この世界の国々ってそれぞれ言語とか違ったりするの?」
「この世界って……世界は一つしかないのにおかしなこときくのねあなた」
「ちょ、ちょっとボケてみたんだよ!」
「なんでこのタイミングでボケるのよ」
(い、いやあ俺この世界の人間じゃないんだけどなあ)
アイリスの笑顔を横に俺は本当は異世界人なのだという真実を押し殺した。
「言語魔術をかけているからなの。そうしないと異国人の言葉なんか分からないわ」
(うわ~随分とご都合のいい魔法だな。現実世界で同じことができたら国際交流の幅が広がってなんとか賞もらっちまうよ)
「じゃ、じゃあ文字とかも解読できる魔法とかも存在する……のかな?」
「ええ、もちろんあるけど……ん? あんたもしかして字が読めないの?」
「ふぇっ!?」
痛いとこをつかれた。
自分自ら字が読めませんということを露呈してしまったのだ
「あ、いやその……見たことない言語だなあ~なんて……」
(ああ~情けない)
「まあ遠い異国の国から来たなら仕方ないわ。大陸も違うだろうし」
「大陸間では言語も文字を全然違うの?」
「ええ、共通点はあれど違いはあるよ」
「へ、へえ~そうなんだ」
無駄なプライドが出てしまって逆に恥ずかしい気持ちになった。
俺はその言語魔法をアイリスに教えてもらおうとした。
「アイリス、よかったら俺に言語魔法教えてくれない?」
「いいけどL3(ランクドライ)級の中級魔術よ? 魔術の基礎がないと普通はできないわ」
「そんなの余裕余裕、やってやるさ」
「わ、わかったわ」
俺はアイリスに教えてもらった通りにやってみた。
「
ゆっくり目を開ける。
すると今まで謎の文字だった看板が全て日本語に訳されているではないか。
「じゃああの店の看板言ってみて」
「え~と酒場オリジンズ」
「正解! じゃああれは?」
「宿舎ハリー・ウェルトン」
「正解! どうやら成功みたいね。いきなりドライ級なんてホントすごいわ!」
「い、いやあそれほどでも……」
余裕とはいったがまさかできるとは思わなかった。
アイリスがここまでベタ褒めする理由がこの国には魔術にランクがあり一番下がL1(ランクアイン)、一番上の最上級魔術はL10(ランクツェーン)で10段階存在する。
さらに魔術はカテゴリーごとに分類されていて、生活などに用いる常用魔術、戦闘時に用いる戦闘魔術、治療を専門とする医療魔術などその他多くの魔術が用途ごとに仕分けられている。
ちなみに今使ったのはL3(ランクドライ)の常用魔術だそうだ。
魔術の基礎を会得していなければ使うことは困難な魔術だ。
「あんた相当魔術のセンスあるわよ」
「そ、そうなのかなあ? ま、まああれくらいは感覚でちょちょっとだよ」
調子に乗り出したその時、後方から大きな爆発音が聞こえた。
「アークビーがでたぞーーーーーー!」
町の人たちは一斉に逃げ出す。
「あーくびー?」
「まずいわ、リュウタロウ逃げるわよ」
俺はアイリスに手を握られ、都の奥のほうへと非難した。
(ふぁ~女の子の手ってこんなに柔らかいんだ……)
緊急事態だというのに脳内でこんなことを考え出す。
仕方ないんだ。女の子と手を繋ぐなんていう高難度クエストは一生達成できないと思ってたんだから。
「ぎゅあああああああああん!」
その化け物は空から3匹ほど飛来し、都の中に着地した。
風貌は巨大なカマキリのような感じで目にはダイヤのような堅そうな部位があった。
「あ、あれって……」
「アークビー、つい最近いきなり現れた謎の魔獣ビースト……」
「二人とも無事か!?」
走ってくるのはバルク団長だ。
「兄さん、なんで奴らがいきなり……」
「分からない、だが今は民の非難が最優先だ。ここは危険だ、裏門から避難するんだ」
「ぎゅるるるるるるるる!」
いきなり目の前にあの化け物が姿を現した。
「くっ……! 早くお前たちは非難するんだ!」
「でも兄さんが……」
「私なら大丈夫だ。簡単にくたばる気はさらさらない!」
(かっけええー……俺の読んでいた異世界ものラノベにもこんなセリフ言う登場人物いたっけなあ。生で聞くとここまで迫力あるとは……)
―――と見惚れているのもつかの間、化け物は唸り声を上げ、襲ってきた。
その攻撃を魔術の壁で防ぐバルク団長。
「死なないでよ兄さん!」
そういうと俺たちは都の裏門めがけて走り出した。
騎士団の迅速な行動によって都の民は全員、都の外に避難することができたみたいだ。
あとは俺たちだけっぽい。2人は全力で裏門を目指す。
ざっと距離は400mほどか。裏門はすぐ目の前だった。
「よしあと少しだ! アイリス大丈夫?」
「これでも魔術学園生よ。馬鹿にしないで」
裏門に着いた次の瞬間だった。
「ぎゅあああああああああああああ!」
裏門を塞ぐように例の化け物が姿を現した。
「え!? さっきまで3体しかいなかったのに……」
どうやらもう1体どこかで潜伏していたようだ。
「―――やるしかないわね。リュウタロウあなたは後ろで隠れていなさい」
「え、でも……」
「あなたを死なせるわけにはいかないわ。さっきの借りもあるしね」
彼女は俺の前の立ち、詠唱を始めた。
「顕現せよ。我が言霊に答え、我が身の盾となれ! ムル・フラガ!」
すると手の先から赤く燃え上がるようにマグが現れた。
終え盛る業火の炎が彼女の身を覆う。
「あれは……マグか?」
アイリスはじっとして動かない。
だが化け物は待ってはくれない。すぐさま彼女に切りかかる。
「あ、あぶない!」
「
美しく宙を舞う炎が悪を切り裂く。
「ぎゃうあああああああああ!」
化け物が大きな裏り声を上げる。
「どう? 私の炎は!」
だが、化け物はすぐ再生しびくともしていない様子だ。
「そんな……しかも再生するなんて」
化け物はすぐ襲ってくる。
化け物の怒涛の連撃がアイリスを襲う。
「うっ……!」
(くそっ! 俺は何もできずに指くわえてろってか。冗談じゃない。女の子1人守れずなにが国造りだ)
俺はアイリスの前に立つ。
「あ、あなた何しているのよ。後ろにいなさいっていったでしょ!」
「男が女の子に守られるなんて論外極まりない! それにこんな可愛い子を傷つけるあいつを俺は許せない!」
「えっ……」
アイリスは俺の言葉に赤面する。
俺は彼女の顔を見ていなかったので知らんかったが。
「しかもだ!こんな綺麗で素晴らしいロマン溢れる世界を汚そうだなんて俺に喧嘩を売っているのも同じ!」
俺は相棒、ヘッズナイトを握りしめ、集中を始めた。
「さあいくぜ相棒! 俺たちの初陣だ!」
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