第19話「ギルド1」
王都から帰還して数日が経った。
俺たちは水舞祭の次の日に再び王宮へと出向いた。
国王陛下はマグの覚醒についてはよく分からなかったといっていたが、良いデータが取れたとご満悦な表情だった。
さて、その次の今回の
「凄いお屋敷ね。陛下が一言いえばこんな立派な豪邸と土地が貰えるなんて……」
「俺もまさかここまでとは思ってもいなかった。こりゃすげぇな」
「でも、リュウタロウ様の働きもこれに見合うものであるとワタクシは思いますわ」
「でもさすがにやりすぎた感がなぁ……」
そう、これは王宮にいた時に遡る。
―――数日前、王宮にて。
「再び足を運んできてくれてすまないな」
「いえ、陛下のご要望なら何度でも」
「感謝いたすぞ。それでリュウタロウ殿」
「あ、はい」
「先日借りたマグを返すぞ」
というと奥から一人の女性が姿を現した。
(ん? 誰だあの美女は)
黄金に輝く髪に少し白色が混じっている。そして透き通った瞳を持った美しい美女だ。
なんでこうこの世界は美女が多いのだろうか。俺の運がいいだけなのかも知れないが、コレが普通なのかと思うくらい身内に多い。
その美女は俺の方に近寄ってくる。
『久しぶり、主様』
「……は?」
『あれぇ? もしかして私のこと忘れちゃったの?』
忘れたもなにも初対面である。
ん? だが少し懐かしい感じがする。
「お、お前まさか……ヴィーレか?」
『おおーせいかーい。さっすが主様』
「なっ……ど、どういう」
彼女は擬人化したヴィーレその人であった。
確かに面影……みたいな物はあった。
「へ、陛下。これは……」
「いや……ワシも驚いたのだ。どうやら彼女のようなマグは特殊らしく、人間の姿で生活することが可能のようだ」
『しかも、主様の要望で容姿や性格も変えられるんだ~』
なるほどな。まあ確かに少し可愛げのある感じになっている気がする。
前は少し男勝りな感じがしたからな。
「なぜなのかって言うのは彼女も知らないそうだ」
『そーいうこと!ってことでよろしくね主様!』
「お、おう」
全てがいきなりすぎて脳が追いつかない。
喋らないはずのものが喋って、人間の姿にもなれるとは。
これに関してはアイリスたちもかなり驚いているようだ。
「さて、それでは本題に移ろう」
陛下が話を切り替える。
「まずは改めて今回の未確認の
(いよいよ、ご褒美タイムか)
これに答える者は既に俺だと言うことは決まっていた。
だが、私利私欲だけで願いを決めるわけにもいかない。
本音を言えば、国づくりの為の莫大な資産と土地が欲しいと言いたいところなのだが、今回は俺だけの力で成し遂げられた訳ではない。
とりあえずは……
「それでは陛下。願いを申し立てます」
「うむ、言ってみよ」
「人が住める家を1件、頂けると嬉しく思います」
「うむ、それは構わないがそれだけで良いのか?」
「はい。私はそれだけで大丈夫であります。後は全てアイリスたちの願いを叶えてあげて頂けると幸いです」
国王陛下は大きな声で、
「はっはっは! 欲のない若者よ。君は他の若者とは少し違うな」
「そ、そうでしょうか?」
「うむ。いい目をしている」
「は、はぁ……」
「願いは聞き入れた。では他の者で願いを申し出る者はおらぬか?」
「私は欲しい物はございません。この度陛下より賞賛された名誉こそ、私にとって最高の褒美だと思っております」
「ワタクシも同じでございます」
「わっわたしもです!」
俺は小声でアイリスたちに耳打ちをする。
「みんな良いのか……? 何でも叶うかも知れないんだぞ?」
「私に願いなんてないわ。私の本当の願いは誰にも叶えられないんですもの……」
「そ、そうなのか……」
イルーナとミルも願いという願いがないみたいだった。
「承知した。君たちは歳に見合わず、大人なのだな。ではリュウタロウ殿の住処についての事は私が責任を持って用意いたそう」
「はい、ありがとうございます」
というわけで話がまとまり、現在に至るわけなのだが……
「どうも2人だけじゃ住みにくい感じがするなぁー」
住みにくいというのは悪いことではない。一通りなんでも揃っているし、誰もが羨む豪邸だ。
でも俺とヴィーレが住むには広すぎる感じがした。
「確かに2人だけで住むんじゃ広すぎるわね」
「寂しい感じがしますわね」
するとミルがポンッと手を叩く。
「皆さん、私に良い案があります!」
「ん? なんだミル良い案って」
「はい。寂しいのでしたらみんなで住めばよろしいのではないでしょうか?」
「……え?」
その案は頭の中には出てこなかった。
確かに良い案だとは思うが、さすがに無理だろう。
そう思っていたのだが……
「それ良い案ね! 私たちが一緒に住めば少しは賑やかになるだろうし……」
「私も賛成ですわ! リュウタロウ様と同居なんて夢みたいですわ~」
「え? ええええええええええええ!?」
いやいやそれはさすがにアウトでしょ。
そもそも俺が住処を陛下に頼んだ理由は自分の住む所がなかったからだ。
いつまでもリーベンバッハ家にお世話になるわけにもいかない。
だからこその申し立てだったのにこれじゃあ…
「いや、みんなそれはさすがにダメでしょ! 家の事もあるだろうし……」
「私は許可もらっているわよ。というかバートンたちもこっちに来るかもしれないわ」
「はい?」
「ワタクシもご両親にはリュウタロウ様のことは言ってありますわ。未来の婿殿としてならと一緒にいることを許可してもらいましたの」
「はいいい!?」
「わ、私は両親とは離れて一人で暮らしているので全然問題ありませんよ?」
「……」
想定外である。あたかも予測していたかのような感じだ。
ここでダメだなんて言えない。
どうしたものか……
すると一つだけ思いついた案が出る。
「住む理由がないのに同居するのはご両親もいささか不安だと思う。だから理由を作ろう」
「理由って?」
「ギルドだ。ギルドを作ろう!」
ギルド、現実世界では中世のヨーロッパで発足した排他的同業者組合のことである。
この世界では主に2つ。1つは狩猟などを目的とする冒険者を対象としたハンターギルド。2つ目は商人などが集い、冒険者たちに物品を売買したりする商人ギルドだ。
俺たちはハンターギルドの1組織として登録するということだ。
こうすれば同居していても何も言われないだろう。
「ギルドということはここを本拠地として設立するわけね」
「そーいうこと!」
「素晴らしい案ですわ! さすが未来の夫リュウタロウ様!」
「さすがです! リュウタロウさん」
「あ、ありがとう……」
色々突っ込みたいが、とりあえず話を進める。
「それでギルド名なんだけど、『RIMA』って名前はどうかな?」
このギルド名は俺たちの名前の頭文字から取ったものだ。
読み方は『リーマ』
「いいんじゃない。分かりやすくて」
「はい。いいと思いますわ」
「異論はありません!」
「よし、じゃあ近いうちに集会所に登録しに行こう!」
この出来事が後にドール大陸3大ギルドと呼ばれる『RIMA』の起源となった。
そしてそれと同時に、彼女たちと生活を共にするというハーレムライフの始まりになるのであった。
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