十作目、グリムハンズを読んで

 なはこ様の作品『グリムハンズ』を読みました。

 ぶっちゃけ、面白かったです。


 

 まずはあらすじから。


 過去の境遇から心を閉ざしがちな少女沙月エリカは、「童話研究会」の顧問教師、如月正太郎と出会い、過去の出来事が自身の『力』に起因する事を教えられた。

 正太郎は、エリカと同じような『力』の持ち主『グリムハンズ』であったのだ。

 エリカは自身の過去に因縁ある異形の物、『ワード』と対峙する事を決意し……。


 これが第一章の大まかなあらすじです。

 二章、三章では既に「童話研究会」の部員や、高校の先輩にスポットが当たり彼等との交流を通して、内罰的であったエリカが居場所を獲得していくジュブナイル小説の様な側面があります。

 その一方で、嘗ての少年である如月正太郎の苦悩と悔恨、そして新たな一歩を描いた作品でもあり、一概にジュブナイル小説とも呼べません。


 登場する主要キャラクターは個性的で、イケメンだけど押しが弱く部長と副部長権限に抗する事の出来ない亀城薫は、索敵能力は高く。才色兼備の学園のマドンナ的な悠木涼葉は、その頭脳と穏やかな心で部員を支えています。エリカはエリカで、直情的であり、その力も『ワード』を仕留める事に特化しているので、性格的にも能力的にもバランスが良いと言えますね。彼ら学生のやり取りは見ていて微笑ましく、ハラハラもさせられます。


 一方で正太郎は、安定性抜群のベテランらしい立ち位置に終始するかと思われましたが、彼は彼でその能力にも過去にも大きな秘密を抱えていました。ですが、作中で当人も言っていますが対人運は相当に良いと言えます。


 この物語の主人公は誰だろうか? そう考えた際に私が導き出した結論は、「童話研究会」に属する面々なのだと言う事です。当初はエリカが主役なのかとも思いましたが、読み進める内に、エリカだけが主役なのではない、顧問を含めた「童話研究会」の面々が主役なのだと思うに至りました。


 学生と教師、その二つの軸から物語を紡ぎだしている。その様に私は感じました。この二つの軸はどちらかに偏っても、今の様な作風には成り得ないと思うのです。そして、何方にも偏らなかったからこそ、あの最後に繋がったのではないかと思えてならないのです。それに、最後の敵の圧倒的スケール、そして再戦時の在り方など大変盛り上がって読みました。


 多くの物語を調べたのだろうと思えば、その熱意には頭が下がります。私もこの年にして知らない童話を、概要とは言え知る事が出来て、その点も収穫と言えます。忠臣の石像とか、ネズミと猫の話とか知らなかった……。



 さて、この作品に問題点を挙げるとしたら、私にとっては誤字が目についた点でしょうか?


 いや、数自体は少ないのですが……こう、のめり込んでいる時に見つけると、やたらと多く感じてしまうのです。


 見舞いと見合いが間違えるのは、私も良くある系統の誤字なのでお互い気を付けましょうね。本当になくならないんだよなぁ……。


 まあ、それは良いのですが、名前の混同は読者が混乱するかと思いますので、明記しておきますね。三章三頁にある記述です。


『そのネズミが最初にエリカを食べ、次に猫がエリカを食べる。やはり物語の共通項として弱い。』


 とあるのですが、これは涼葉の事ではないかなと思ったのです。……こんなこと書いて、私が間違っていたら良い笑い者ですが……。


 ともあれ、作品の構成としては、私が見習いたいくらいなので、こんな所しか突けませんでした。



 私からの感想は以上となります。


 次の感想は……1.星十里手品様、参加作品は『ルビヤの石』です。

 今回の参加作品の中で一番長い物語ですね。

 ちょっと、仕事の関係も絡み感想を書くまでお時間いただくと思います。

 1週間かかる事は無いと思いますが。


 あ、グリムハンズを読んだキロールは今日の夜か、明日に更新します。

 この作品を読んでたら、私の作品の『ボク達とレイジーとメイドさん』の軸の起き方とかちょっと確認したくなったので。(ダイマ

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