一作目、夢三十三夜を読んで

 目様の作品、夢三十三夜を読みました。

 

 最初から、いきなりな入りですが、私の事を四の五の語るより作品について語らにゃいかんのです。


 夢三十三夜と言う題名であり、一部は作者様の見た夢が元になって居るのは確かなようですが、しかし、この短編集はそれだけではないのです。


 作者様が以前に創作された短歌や回文を元にお話を作られたものもあり、非常にバラエティに富んでおります。


 さて、肝心のその内容ですが……いやはや、脱帽ですわ。


 こんな夢を見た、で始まるこの短編たちは、黒澤明の映画『夢』を一瞬彷彿させます。ですが、綴られるお話は黒澤映画の映像美にも勝るとも劣らない珠玉の短編たちです。


 夢と言うと突拍子もない設定であったり、妙にリアルであったりするものですが、この短編集はとても奇妙で、それでいてリアルさを感じさせてくれます。


 自分の身に降りかかったことを淡々と書き連ねているような文章であったり、増長な会話劇であったり、詩と思しき調子に物語が変調したりと、オムニバスらしく一話ごとにその物語は変わっていきますが、それでいて違和感なく受け入れられたのは、夢小説だからかもしれません。


 作風としてはシュールであったり、ナンセンスであったりと言えるかもしれませんが、夢で見たなら仕方ないと思ってしまうのが、夢小説の強みかも知れません。


 だからと言って、全てが不条理かと言えばそうでは無い。不条理の中にも、ある種の感動があり、背筋をぞくりとさせる何かが秘められているのです。それに、幾つかの作品は、ある種の童話のような読後感を与えてくれるものもあります。


 そして、作品と作品が対となる様な繋がりを持たせているのも、心憎い演出であります。対となっていますが、明確な続き物とかではなく、仄かな繋がりを感じさせる程度です。


 それでも、一つの話の裏側を垣間見たり、奇妙な符号の一致に驚いたりと楽しみは尽きませんでした。作者様は、それを最初の数話だけでなく、最後まで読んでもらうための工夫であるとまえがきに書かれておりますが、なるほどと思う次第です。


 しかし、残念ながらあまり多くを語ると、幾つかの衝撃が薄れてしまいかねません。最初のインパクトを薄くさせるのは、私の本意ではないため、敢えて私は作品一つ一つについて、或いはお気に入りの作品について語りません。


 ただ、作者様は言葉と言うか文字に対しての思考実験や、周囲とか色々な物からのズレと言う物がテーマになっているのかな? とは感じました。勿論、私の勘違いの可能性もありますが。


 作品や私の考えなどが気になった方は、自身の目でお確かめください。









 しかし、まったく書かないのは、私の精神衛生上に悪いので、読んだ人にしか分からない感想を幾つか。


 山さんはコロンボみたいだなぁ。


 K君のお食事を見ていると、祖父に連れられて行ったラーメン屋にて食べた味噌ラーメンを思い出します。そこで初めて食べたんだ、キクラゲ。


 最初は滑稽譚だと思ったんです。どうも、意識が沈みきったあたりで妙な感覚を覚えましてね。最後には、なんか感動してました。個人的には生物都市かな。クトゥルフ好きならウボ=サスラとか言えば良いのかも知れませんが、それよりは人間的な温かみがあるように感じるのです。(おいしい)



 さてさて、感想はこんな所で。

 次回は4.髙田 輝様、参加作品は『怪盗フィルのキャンパスライフ』です。


 流石に、今日中に感想は書けないと思うので、明日以降をお楽しみに。

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