六作目、亜人の行進を読んで

 六連 シロク様の作品、亜人の行進を読みました。


 単刀直入に言って面白いです。

 表現は敢えて平易にしている風に感じましたが、それがテンポを崩すことなく読み進めるためには必要なのかもしれないと深く感じました。

 また、スマホで読んでも読み易かったです。

 ……仕事の昼休みとか休憩時間に読んだのです。


 さて、あらすじです。


 ワーウルフのシヴァは、村で平和に暮らしていました。

 所が、12歳になったある日、村にヒトが押し寄せて村人たちを殺してしまいました。

 その理由は、ワーウルフに対する恐れや危機感からではなく、毛皮を剥いで売り捌く為。

 皮のない同族の、誰が父か母かも分らぬ死体の前で復讐を誓い四年の歳月が流れ……。


 

 このあらすじだと序盤の序盤しか書いてないのですが、初っ端からハードなパンチを繰り出されましたね。

 襲う理由が経済目的。

 後から分りますが、襲って来たのは敗残兵です。

 奴らはワーウルフの毛皮を売り捌いた金で成り上がり、今では立派な奴隷商人。

 奴隷を見てヒトはヒトも浚うのかとシヴァは驚きます。

 まあ、その奴隷商人どもはさっくり殺され、そこから本当の物語の幕開けとなるんですがね!


 

 正直に言えば、最初は少しだけ物語に入り込めなかったのです。

 ヒトを憎むシヴァは、ヒトがトップを務める亜人たちの傭兵団に加入しますが、そこの葛藤が少し薄い気もしましたし、何より団長のアイミーにせよ、その兄ミルタにせよ、如何にも油断ならない人物にしか見えず、状況がどう転がるのか読めないからです。

 変に入れ込み過ぎると、ショックがね、ほら。


 と言う訳で、少し斜に構えて読んでいたのですが、次第にそんな感覚は消えていきました。

 アイミーが金にしか興味がない事と、金の算出方法を知ればまず安堵し、ミルタも癖は強いし腹に一物抱えているのが明白ですが、当分は問題ないだろうと思えたのも大きいですね。

 なにより、ミルタに限って言えば指揮官としての素養に優れ、兵を如何に失わないか、何処で殺すかの算段が利く男だと分ったことは、私には安堵する要因になりました。

 感情で突っ走るやつが一番油断ならないですからね!(偏見)


 その他にも魅力的な人物が出てきますが、私はミルタやアイミーがつかえている皇帝とその周りに一層の興味を持ちました。

 皇帝自身は兄妹の父であるジェイクと友人であり、為政者として中々の判断ができる男ですが、後継者問題で悩んでいると言う姿は、いくつもの結果を想起させて楽しいです。

 第一皇子は重責を負わず、栄誉だけ自分の物にするタイプ。でも、もしかしたらまともになるかもと言う親の願いは、きっと叶わないでしょうね。


 その第一皇子の教育係は、アイミーとミルタの家とそりが合わないセルロ家の当主なのですが、この人物もまた面白い。

 この手の物語ですと、第一皇子に何やら吹き込んでと言うのが定番ですが、彼は違います。

 現状に不満がある第一皇子が皇帝と意見を衝突させた際も、彼は第一皇子を丸め込んで、現状維持があなたの為なのだと諭していました。

 極めつけは、皇帝に対して第一皇子は為政者の器に非ずと率直に告げたところです。

 彼は大公ですが、大公だろうが、何だろうが国が揺らいでは意味が無いと言う考えからか、きっぱりと告げていたことに素直に感心してしまいました。

 今だけなのかもしれませんが、中々の人物です。

 そして、そんなまともな判断ができる人物とこの先、見えない戦いを繰り広げなくてはいけないかも知れないと考えると、中々に兄妹は骨が折れそうですね。


 さて、主人公のシヴァについて然程語っておりませんが、彼は今のところ要所で役に立つ傭兵に過ぎず、大局的な所から見ればまだ大きな仕事はしていません。

 どうしても壮大な絵図を描くアイミーとミルタ兄妹の方にフォーカスが当たってしまいがちです。

 でも、それはそれで良いのだと思いました。

 大きな流れの中で何を感じて、どの様な判断を下していくのかが、シヴァの見所です。

 何せシヴァは、ミルタ曰く『彼が今憎んでいるのは僕やアイミーみたいな支配層と、弱者を貶める略奪者だからねー』とのこと。

 今のところは、アイミーの下で多くの亜人と共に戦っていますが、さて、この先何が起きるのか……。


 彼の決断とアイミー達の描く絵図が完成するのかどうかが今後の見所かも知れません。

 個人的には、サラディアにて革命を起こそうとするレタシー公爵の成否が気になります。

 彼には成功してほしい物です。


 最後になりますが、時折『王』と『皇帝』と言う表記が入り混じってます。

 私が読み落としていて、帝国の皇帝は何処かの王を兼ねている場合は申し訳ありません。

 現実にもある事なので、読み落としかなと何度か読んだのですが、ちょっと見つけられませんでした。

 もし、間違いであったならば、統一していただけたらより読み易いです。


 以上が19話"信じる"矛先は違うまで読んだ私の感想となります。


 それでは次の作品は……Trijicon.(トリジコンドット)様、参加作品は『吸血鬼と眷属の弾丸協奏曲バレットコンツェルト』です。

 感想は日曜日位に投稿予定です。

 

 亜人の行進を読んだキロールは今夜遅くに投稿予定です。

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