第14話 「メタルギア・ソリッド」


 プレイステーションのゲームである。もともと「メタルギア」はファミコンのソフトであり、「メタルギア・ソリッド」はその続編にあたる。


 プレイステーション発売時の発売予定ソフトに、この「メタルギア」の続編がすでにあったそうで、ログ夫くんの知り合いはそれ目当てにプレイステーションを買ったそうだが、なかなか発売されず、結局リリースされたのは、プレイステーション末期、プレステ2が発売されたころだった。


 ぼくはログ夫くんに勧められて、わけも分からず新発売されたこのソフトを攻略していくのだが、その作品レベルの高さに舌をまいた。


 大人向けの音楽。そして豪華な声優陣。


 まるでアクション映画のような演出。クライブ・カッスラーやロバート・ラドラムを彷彿させる冒険小説の香り。最新式の軍事兵器に架空の兵器が混じるという息を呑むようなフィクション性。


 敵に見つからないよう要塞に潜入するというゲーム性も興奮する。


 また、シリアスな展開に必ずまじるギャグ要素。


 敵が「俺の念動力サイコキネシスを見せてやる」と言い出し、「堅い床の上にコントローラーを置け」とかいうくだりは、笑えるのだが、でも醒めない。もうこの辺りは凄い。

 そして、コントローラーの振動機能を活用して、床の上に置かれたそれが動いた時、やっぱどうしても「おー」と驚いてしまうのだ。

 もちろん、それはサイコキネシスではないのだけれど。



 また、途中で主人公スネークが電撃による拷問を受け、もしそこで死んでしまうと、「特殊ボイス」が流れるなんて演出もあった。


 拷問した男がボスに「殺してどうする!」と怒られ、「すみません、ついうっかり」とか謝るらしい。


 他にも製作者の遊びはふんだんにあった。

 途中で手に入るカメラで写真を撮りまくると、まれに心霊写真が撮れたりするらしい。



 また、敵も格好いい。


 「リボルバー・オセロット」と言われて、船戸与一の「山猫オセロットの夏」を思いださない人はいるだろうか? あ、読んでないと思いださないか(笑)。


 では、ラストの「ぼくの名前はデイビットだ」は?


 これぞ、ロバート・ラドラムの名作「暗殺者」の最後のセリフと同じではないか。




 もし、数あるプレイステーションのゲームの中で、万人に勧めるとするならば、やはりこのソフトになるだろう。緊迫のアクションであるにも関わらず、ゲームが下手な人でも必ずクリアできるし、またそのクリア方法も、何種類も用意されている。

 当時のゲーム・ソフトの最高傑作といっても過言ではない。少なくとも、三本の指に入ることは、万人が認めるのではないか?



 本作は、まずゲームソフトとして、歴史に残る名作である。


 ところが、もうひとつ、この作品は重要なキーアイテムとして、日本の歴史を変えたのである。……といってはオーバーかな?。




 本作の大ファンであり、そのファンが高じて、二次小説を書き、それを本作の監督に持って行った男がいる。


 小島監督は、当初の小説は「凡庸」だったと述懐していた。


 そして、こんなことも語っていた。


「彼の小説が凄みを増したのは、彼が死病に取りつかれてからである」と。



 天才といわれたSF作家、伊藤計画氏のことである。彼の小説を読み、SF作家をそこから目指した書き手や、少なからず影響を受けた書き手は、カクヨムにも多い。


 本当のエンタメ作品というものは、どうやら各界のジャンルに根を下ろすもののようだ。



 ただし、伊藤計劃氏と「メタルギア」の関係性は、当人にしか分からないことなので、上の記述は、話半分に読んでおいていただきたい。

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