第8話 「伝説のオウガバトル」




 ちょっとこの作品は、記憶が曖昧である。最初やったのがスーパーファミコン版かセガサターン版か覚えていないのだ。

 まあ、それくらいあの頃はいろいろと手を出していたのかも知れないが。


 不確かな記憶では、最初スーパーファミコン版をやって途中で投げ出し、ソフトを売ってしまい、スーパーファミコン版で発売された続編『タクティクスオウガ』をやりたいなーとは思いつつ、その前作である『伝説のオウガバトル』をクリアしていないので躊躇しているうちに、スーパーファミコンの時代が終わり、セガサターン版が発売されたのを機に、再び『伝説のオウガバトル』に挑戦したような記憶なのである。



 なんにしろ、最初やったとき、なにがなんだか分からなかった。それは、ゲームシステムが独特であったからなのだが、逆に言えば新鮮で、面白かった。


 まずグラフィックが素晴らしい。中世を舞台にしたハイ・ファンタジー。帝国による圧政に苦しむ民衆を、反乱軍のリーダーとなって解放するというストーリー。イベントをクリアすることに仲間になるキャラクター。そして多彩なジョブ。

 魔導士がおり、騎士がおり、ドラゴン、グリフォン、ケルベロス。いずれも仲間にすることができて、サイズによって数の変動する小隊ユニットを編成できる。固有キャラクターには固有のジョブがあり、バルタンであるとかジェネラルであるとか、もう世界観が素晴らしい。


 また、個性的なジョブにチェンジする条件も、成長したときのパラメーターであったり、特殊アイテムであったり、場合によっては「ウェアウルフの攻撃を受けて感染した場合、ウェアウルフになれることがある」なんて条件もあって、本当に楽しかった。



 何十面もあるマップは、自分の本拠地から敵の本拠地までのあいだに海あり山ありで、川が流れ、街道が走り、途中には拠点、すなわち開放すべき街が点在する。



 プレイヤーは、自軍のユニットに、進撃させる位置にフラグをたてて指示を出す。するとユニットは自動でその場所へ向かう。途中で敵のユニットに出会うと自動で戦闘になるが、戦闘も互いに2回攻撃を行うテンポの良いもので、マップ攻略のリアルタイム制をうまく引き立てていた。


 マップのクリアは敵本拠地にいる敵のボスを倒せば完了。それまでに細かい街は自軍ユニットを派遣して解放する必要がある。


 最初、訳が分からないまでも、バトルは快調に進んだ。つぎつぎとマップを攻略し、どんどん敵を倒して行き、ユニットのレベルもアップし、反乱軍も大きくなった。


 だが反面、マップ画面の右上にある謎のゲージ『カオスフレーム』は徐々にさがって行っていた。


 最初、街を解放すると歓声が沸き起こっていたはずだが、いつの間にか、街に解放軍のユニットが入るとブーイングが起こるようになる。


 そして、ある面をクリアするも、将軍が仲間になるイベントがどうしても発生しない。



 悩んだ末に、攻略本を買ってきたのだが、これまた難解だった。


 この攻略本、ゲームの世界観説明がなく、最初にこういう項目から解説されていた。


「死神作戦」……。



 もう訳が分からなかった。

 諦めてソフトは売ったと思う。たぶん。で、のちに、セガサターン版が出たとき、ふたたび購入。ひとつ前回と大きく違ったのは、ちゃんと最初からシステムと世界観を解説された攻略本が出版されたこと。



 本来は攻略本なんぞなしで謎を解くのが醍醐味なのだろうが、そこまで熱を入れてやっていなかったのだ。もちろんソフト付属の取り扱い説明書に詳しい解説があるはずもなく……。



 そしてぼくは、初めてこの『伝説のオウガバトル』の深遠なる作品世界を知ることになる。



 「カオスフレーム」とは、民衆の評価なのだ。

 解放軍が正しい行いをしていれば、解放された街の人々は歓声をあげるが、暴虐の限りを尽くす秩序の破壊者であれば、それは侵略であり、街の人々はブーイングするのだ。


 敵と戦い、勝利するとキャラクターのレベルは上がる。これは従来のゲームと同じだ。ところが、レベルのあがったキャラクターで、格下の相手を倒すと、それだけ神聖値アライメントが落ちる。このアライメントが落ちたユニットで拠点を解放すれば、カオスフレームは下がるのだ。

 つまり、弱い者イジメをしてはダメということなのである。



 やり込めば、めちゃくちゃ面白いゲームだと思ったが、このときはある意味リベンジ。このあとに控えた『タクティクス・オウガ』をやりたい気持ちが強かったので、攻略本片手に、とにかくグッドエンディングでのクリアを目指した。



 そしてこのとき使ったのが、前述の「死神作戦」。やっとここに辿り着いた。


 やり方は簡単。殺戮専用の死神部隊を育てて、戦闘は全部そいつらにやらせる。


 で、拠点解放は、必要最低限の戦闘しかしない、いい子ちゃんの解放部隊が行う。


 主人公であるオピニオン・リーダーは、敵の本拠地を攻略するのだが、普通に攻略するとレベルがあがってしまう。そこで、死神部隊によって攻撃させ、ぎりぎりまで戦力を削いだ上で、最後のトドメだけ刺しにゆく。

 なんという偽善!(笑)



 また、途中で仲間になるイベントが発生しなくて苦労した将軍だが、これについても新しい攻略本は解説してくれていた。


 だいたいあの辺りのマップで、反乱軍のメンバーが100人くらいに達してしまうらしい。反乱軍のメンバーには上限があり、それ以上増やすことが出来ない。よって、事前に誰かを解雇しておかないと、将軍が仲間になるイベント自体が発生しないとか。……そうだったのか。





 この方法で、『伝説のオウガバトル』セガサターン版をクリアした。すべてのイベントは発生させ、財宝は回収し、グッドエンディングを目指す。

 それでも楽しかった。これきっと、何度やっても楽しいゲームだと思う。



 このときのプレイでは、隠された財宝から「ドリームクラウン」が3つ出た。

 「ドリームクラウン」とは、アマゾネスをプリンセスにジョブ・チェンジさせるアイテムであり、通常のプレイでも一つは手に入る。そこからさらに3つ出たため、ぼくは自軍に、なんと4人のプリンセスを所持することとなる。


 このプリンセスというジョブ。一人いれば戦局を大きく左右すると言われるほどの強力な手駒である。プリンセスをリーダーに据えたユニットは、全キャラの攻撃回数が一回ずつ増えるという強烈なものだ。そんなユニットを実に4騎!


 いやー、強かったなー、あの反乱軍。


 が、敵もさるもの。

 ラスボスはこの四姉妹のプリンセスによる総攻撃を跳ね除け、なんと彼女たちの部隊を下がらせたんだから。まあ、勝ちましたけど。そしてグッド・エンディングでした。




 攻略本片手にさらーっとクリアしてしまった『伝説のオウガバトル』だが、これきっとやり込めばやり込むほど、面白さが出てくる作品だったにちがいない。


 だが、当時のぼくたちは、他にやらねばならない名作ゲームが多すぎた。そこが残念なところかもしれないが、この『伝説のオウガバトル』が名作であることは、間違いない事実である。


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