第22話 赤い箱にぼくらは狂喜乱舞した


 PSOには、レアアイテムが多数あった。

 そして、このレアイテム、なかなか、いや全く出ない。


 エネミーを倒すと稀に、スペシャル・ウェポンというアイテム・ボックスを落とすのだ。このスペシャル・ウェポンは、バージョン2から赤い箱になった気がする。そのまえは、青だったかな? ちょっと覚えてないけど。


 ちなみに、聞いた話ですと、激レアといわれるソニック・ナックルという武器の出現確率は百万分の1だそうだ。聞いた話なので数値は不正確かも知れない。


 が、これ。アイテムに対する出現確率ではなくて、たまに出るスペシャル・ウェポンの箱からソニック・ナックルが出てくる確率なので、これはもう宝くじの当選と変わらない。

 それくらいレアだった。


 さらに、ある漫画家さんがソニック・チームに頼んで作ってもらったオリジナル武器があり、これは出現確率0だった。プレイしているその漫画家さんと仲良くなってもらうしかないという、そんなふざけた武器もあったくらいだ。



 ただ、ちょっと問題だったなと思うのは、雑誌の紹介記事や攻略本に載っていた武器のほとんどが、どんなにプレイしてもまず出現しないレア度のアイテムだったことだ。


 正直テクニカル・クローサーなんて持っている人に会ったこともない。出たなんて話すら聞いたことがなかった。毎日のように何万人ものプレイヤーが潜っていたにも関わらずだ。

 そして、そんな出もしないレアアイテムを宣伝に使用していた。




 レアといえば、登場するエネミーにも、レアエネミーがいた。


 通常は白いユリのモンスター、ポイゾナスリリーが、まれに赤いナルリリーという個体で出現するのだ。


 初期の頃、このナルリリーが出現したことがあった。

 ぼくは見損ねたけど。


 戦闘中だった。乱戦のさなか、そのナルリリーは出現したらしい。


 それに気づいた恥辱王ランスは、みんなに教えるなんてことはせず、大慌てで一人で退治したそうだ。レアアイテムの独り占めを狙って。

 それに気づいていたブルースが、戦闘終了後、鋭く突っ込んだ。


ブルース「ナルリリー出ましたよね」

きいちこ「嘘!? で、どうしたの?」

ランス「あ、いや……」

ブルース「一人でこっそり倒してましたよね」

ランス「えーと……」

きいちこ「何か出た?」

ランス「ダイナマイト……」

きいちこ「えー!」

ランス「いや、すんません。ミスタッチです。ディメイト(回復薬)です」

きいちこ「ディメイトかよ」

ブルース「引きが弱いっすねー」


 レアモンスターが出て、一人こっそり大慌てで狩って、そのくせ回復薬しか手に入れられない恥辱王ランスであった。




 かなりあとになってのことだ。一人で遺跡に潜っていたとき、スペシャル・ウェポンを拾ったことがある。


 なんじゃこりゃと思って装備してみると、先っぽに鳥の羽がついた変な魔法杖。見たことも聞いたこともない杖だった。

 それは、カジューシースというレア武器だった。


 この杖。打撃武器として振り回すと、TPポイントの消費無しで、初級魔法のフォイエが出る。そして、羽が舞う特殊エフェクトがつく。


 レアだし、すごく気に入って、ずーっと使っていた。まさにこれ、お気に入りの武器だった。


 のちにゲームキューブ版に移行したときも、このカジューシースが出て、やっぱり使っていた。

 これは魔法杖なので、もしかしたら杖の方で、ぼくのことを選んでくれたのかも知れない。


 あれは、思い出の魔法杖だ。



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