第23話 ぼくはあの惑星で魔法使いとして戦った
PSOはアクションRPGである。
キャラクターはレバーで移動し、視点は基本後方。ただし、キャラクターを回してもカメラ位置は動かない。
トリガーを引くと、視点は後方にリセットされる。また、もうひとつのアナログレバーでカメラ視点を任意に回すことも出来た。
攻撃やアイテムのボタンはパレットに自由に振り分けられる。これはトリガーを引くと裏パレットと切り替わる。
パレットは4ボタンだから、8つまでのアクションをボタンに振り分けることが出来た。
レバーで移動して、攻撃はボタンを押すだけ。ハンターなら基本打撃武器で、攻撃ボタンを押すだけ。
攻撃は3コンボまであり、弱、中、強の3連続なのだが、3つ目は威力が高い分硬直時間も長かったので、通常は弱、中で止め、再び弱、中で攻撃することが多かった。
ぼくはフォース、すなわち魔法使いだったので、当然パレットには全部魔法が入っていた。
攻撃魔法は基本、火属性、雷属性、氷属性があり、それぞれに初級魔法、中級魔法、上級魔法があった。
他に、味方の攻撃力を上げる魔法と防御力を上げる魔法。さらに、敵の攻撃力を下げる魔法と、敵の防御力を下げる魔法。
そして、回復魔法と治癒魔法、復活魔法、さらにはロビーへ帰る魔法といろいろあった。
当然、8つしかないパレットは全然足りなかった。
ぼくは魔法使いなので、ハンターやレンジャーの立ち回りは分からない。レンジャーは少しだけやったけど。
魔法使いは最初に攻撃呪文のフォイエを覚える。
単体攻撃で、火球を飛ばすもの。これを何発かエネミーに当てると、エネミーは死ぬ。
ヒット時にエネミーはかすかにノックバックするが、これはわずかなのけぞりだ。これよりも、フォースのテクニック詠唱後の硬直時間の方が長い。
すなわち、距離を取って魔法を当て、倒しきらないとだんだん近づいてくる敵から、場合によっては一度離脱する必要があった。
そうしないと反撃を受け、がっつりHPを削られたり、場合によってはダウンして倒れた。
もちろん複数の敵に囲まれれば死ぬこともあった。
初級の第2ステージ「洞窟」あたりで、中級魔法のギ・フォイエを習得できるのだが、これは自分の周りに生成された火球が円を描きながらだんだん遠くなっていく魔法だ。
その過程で複数の敵にヒットする。のだが、敵のノックバック時間が短く、こちらの詠唱硬直が長い。
まともに放つと確実に反撃を受けるので、ぼくは後ろを向いてギ・フォイエを撃っていた。
後方でのヒットはタイミング的に遅くなるため、敵にヒットしてからの離脱が可能だったからだ。
基本、PSOの中級魔法は使えないものが多かった。
ギフォイエは突撃してくる
また、敵の属性によって火、雷、氷で与えるダメージが変わる。
洞窟では火が効果的だが、坑道のマシーン・エネミーには雷系が効果が高い。
そのため、洞窟をクリアして坑道に入るとき、パレットのラフォイエをラゾンデに変える作業が必要だった、
バージョン2になるまでは……。
バージョン2で導入されるある画期的なシステムの話の前に、魔法使いのオンラインでの立ち回りについての解説をしよう。
フォースは、オフラインでちまちま戦う場合は、もちろん攻撃魔法一択だ。解説もくそもない。
ただし、のちに手に入るダブルセイバーは中盤では愛用した。いや、ほんとお世話になった。
その理由は簡単。ダブルセイバーは回転系武器で、ヒット回数が多い。そして、エネミーにヒットするとTPが溜まるのだ。どうしてもフルイド系TP回復薬が不足しがちなフォースは、中盤ではこのダブルセイバーに頼る必要があった。
が、やはり魔法使いであるフォース。攻撃の基本は攻撃魔法。ただし、オンラインではその立ち回りは大きく変わる。
まず、オンラインでのフォース最大の仕事は回復。味方の回復だ。敵が大群で押し寄せる遺跡などでは、とにかく回復回復回復。それがパーティーメンバーの生死を分かつ。
前衛として立つハンターが死んだら、次に死ぬのは防御力のないフォース。自分である。
映画『七人の侍』にこんな台詞がある。
「人を守ってこそ、自分も守れる。 己のことばかり考えるやつは、己をも滅ぼす奴だ」
自分が生き残りたかったら、味方を助ける。それがパーティープレイでの鉄則だ。だから、フォースは眼前の敵ばかりではなく、画面の隅に表示される味方のステータスから目が離せなかった。
HPが削られた味方がいたら、即回復。状態異常に陥った味方がいたら、即浄化。
味方の攻撃力アップ防御力アップの魔法シフタ&デバンドが切れたら、即継続。
敵が出現したら、敵の攻撃力ダウン防御力ダウンのジェルン&ザルアを真っ先に掛けに行く。
そして、その合間に、敵属性に適した攻撃魔法を撃ち続ける。
この攻撃魔法も極力エネミーが麻痺状態になるものを選ぶ。
敵が麻痺すれば、敵の反撃は来ないし、その間味方のハンターたちは攻撃し放題になる。ダメージ量よりも、麻痺重視。それがぼくの選択だった。
また、テクニックは絶対に当たるという特性を活かして、味方の攻撃がスカって敵が仰け反らず、味方が攻撃を受けそうな場合にも、タイミングを合わせて全体攻撃魔法を当てて動きを止める。
味方はダメージを受けないし、反撃の手も止まらない。
徹底的に味方に合わせ、絶対的なサポートをする。そこが面白かった。
ある日、ベリーハードの遺跡に、恥辱王ランスと二人で潜ったときのことである。その頃の遺跡は、四人でいっても危険な場所だったのだが……。
二人してつぎつぎと部屋をクリアしていったとき、エネミーを掃討し尽くした部屋で恥辱王ランスが「おお……ww」と感嘆の声を上げた。
「たった二人なのに、サクサク進める」と。
最初使えないと評価されていたフォースだが、この頃には腕のいい魔法使いが一人いるだけで、パーティー全体の戦闘力が格段に上がることが認識されはじめていた。
前面に立つヒーローばかりではなく、それをサポートする裏方が勝敗を左右する場合がある。そんな真のチームプレーが存在した。
それがPSOだった。
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