第24話 禁断のそれ
PSOではプレイヤーに長くプレイしてもらうためにだろうか? レアアイテムがなかなか出ない仕様だった。ソニックナックルの100万分の1は大げさとしても、攻略本や紹介記事で宣伝していた格好いい武器のほとんどが、まったく絶対出ないレベルだった。
そこで、ソニック・チームもクエストをクリアすると手に入るというようなイベントを用意して、レアアイテムを配布する動きを見せたのだが、焼け石に水だった。
あまりにも出ないレアアイテムに痺れを切らしたユーザーたちが、改造コードによるチートアイテムに手を出し、それが蔓延した動きは決してユーザーのモラルだけの問題ではなかったと思う。
ぼくは最後までチートアイテムに手は出さなかったが、それはぼくがゲームをするにあたって自分の中で自分のルールを決めていたからだ……といいたいところだが、実際は本職がフォースだったからというのが大きい。
魔法使いはあまり、武器の性能に左右されない職業だっただけだ。
チートアイテムの作り方は簡単。アキハバラにいって、それ専用ツールを買ってくるだけ。あとはそれを繋いで、セーブデータ内にある武器の番号を書き換えれば、簡単にレア武器が手に入る。
所持しているアイテムのデータも、レア武器のデータも、結局はROMとメモリーカードの中にすべて入っているので簡単だ。
ただし、これは運営側と真面目にプレーしてレアアイテムを追い求めているプレイヤーにとっては面白くない動きだった。両者ともに、この改造コードだのチートアイテムだのがゲーム世界を破壊すると危惧していた。
まあ、実際にはそうでもなかったのだが。
ただし、悪質な改造コードを使用したプレイヤーがいたことも事実だ。
有名なところでは「逆レスタ」。
レスタとは、PSOにおける回復魔法のことであり、みなさんいつもお世話になっているテクニックだ。が、逆レスタとなると話は変わる。
これは改造データにより、味方に与えるHP量をマイナス値に変更した改造テクニックである。
もとがレスタだから、味方全員にかかる。が、あたえるHP量がマイナスだから、回復ではなく、ダメージをあたえる。これをくらうと、敵ではなく味方が全滅したのだ。
パーティーにいた魔法使いの手がぴかっと光った瞬間、そこにいたプレイヤーが全員殺戮される。倒れて、そこに落ちた武器とメセタ(初期のPSOはそういう仕様だった)を回収したそいつは、「Thank you」と告げて去ってゆく。
そんな事件がじっさいにあったらしい。
当時はみんなして、「怖ぇー」と震え上がったものだ。
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