むかしのゲームの話をしよう
雲江斬太
第1話 「ドルアーガの塔」
ちゃっちゃらーちゃー、ちゃらら、らっちゃらー♫
ちゃっちゃらーちゃー、ちゃらら、らーー♫
1984年7月にナムコより発表されたアーケードゲームである。
ぼくがこの『ドルアーガの塔』と出会ったのはゲームセンター。当時は駅の近くには必ず個人経営のゲームセンターが複数軒あり、風営法のない時代、小学生や中学生のたまり場となっていた。
「インベーダーゲーム」こと『スペースインベーダー』の発売が1978年。「ファミコン」こと『ファミリーコンピューター』の発売が1983年。まだまだコンピューター・ゲームの黎明期である。
そんな中、ゲーセンに登場した『ドルアーガの塔』。
その画面は横長長方形。
当時のテーブル筐体の画面は、いまのスマホみたいな縦型。主人公である騎士「ギル」を横に動かすと、すこし画面がスクロールする仕様だった。
横長画面。背景はレンガ。
正方形のマスの四方に柱が置かれ、ランダムに壁で仕切られて迷路になったステージは、「ドルアーガの塔」の内部という迷宮である。
この迷路の中を上下左右に動き回り、敵を倒し、床に落ちている鍵を取り、扉をあけて上の階に行くというのがこのゲームの設定だ。
オープニング画面から流れてくる猛々しいマーチ。騎士「ギル」になりきり、悪魔ドルアーガの支配する塔をのぼり、お姫様を救い出す。
シンプルなテーブル筐体アーケード・ゲームにあるまじき、壮大なストーリー性。
当時のぼくは、すっかりその美麗な画像と勇壮なミュージックに魅了されて、なかば条件反射的に筐体のスロットに百円玉を放り込んでいたものである。
ステージ上には魔物がおり、ギルが触れると殺されてしまう。倒すためには、たった一つあるボタンを押して剣を抜き放ち、突撃していって突き刺すしかない。
ただし、スライムの動くタイミングにより負けたり、敵ナイトの体力(正確にはギルが弱っていると)により死んだりするという、絶対的な強さのない主人公であった。
また、この剣。
ボタンを押すと抜き放つのだが、そのギルのモーションかドット絵のくせしてあまりにも美麗。なもんだから、大抵のプレイヤーが『ボタンを押して敵を斬る』ものだと勘違いしてしまった。
なので、当時を知るプレイヤーの間に伝わる「ドルアーガあるある」。
『ボタン押しっぱなしで、剣が出続けるんだ!とあとから気づく』
知らないから、みんなスライムのそばでボタン連打して、ぶんぶん剣振り回してたよ。
ちがうゲームだけど、『バーチャ・ファイター』のガード・ボタンでもおんなじ現象が見られたな。ガードはボタン押しっぱなしでOKなんだけど、知らないから当たる瞬間にタイミング良く押そうとして、カクカクしながら殴られるという……あれ。
『ドルアーガの塔』のステージは全60面。
すなわち60階まであるフロアを制覇して、途中でラスボス・ドルアーガを倒したのち、お姫様カイ(ドット絵で3等身だけど)を助けてクリアである。
フロアが上がるごとに強くなる敵に対抗するように、主人公ギルもパワーアップしてゆく。
その秘密が各フロアに隠された宝箱だ。この宝箱は、出現方法が全フロア異なり、当初は当然秘密にされていた。が、のちに公開され、ゲーセンの筐体にはその出現方法が書かれたメモが貼られることになる。
ぼくが『ドルアーガの塔』をクリアするのは、もちろんこの宝箱の出現方法が公開されてのち、そして1ゲーム50円になってから。
50円玉を積み上げ、5枚ということはなかったが、10枚は使わずにクリアできた記憶がある
。
そして、この宝箱の出し方がこれまた色々で、第1面の「グリーン・スライムを3匹倒す」から始まり第2面「ブラック・スライムを2匹倒す」、第3面「扉の前を歩く」と続く。
第3面の「扉の前を歩く」は、当然見下ろし型の2Dゲームだから、扉の上を歩くことになる。
本作は上の階に行くには、通路に落ちている鍵をとって扉のそばにいくと、扉が開いてそこに階段が表示され、そこを通って初めて面クリア。よって、第3面は鍵をもった状態で扉の前を通ると自動的に面クリアしてしまうため、鍵をとらないうちに扉の上を通過する必要があった。
また、上の階へ続くこの階段だが、思い切って駆け込んだ瞬間は当たり判定があり、階段の上にいるのに、後ろから飛んできた敵魔術師の呪文がヒットし、階段上で「ピロリロリロリーン」と死んだりすることが結構ある。
これも「ドルアーガあるある」であった。階段に入っとるやん! なんで死ぬんや!
『ドルアーガの塔』では、この宝箱の出すことがひとつの大きなミッションになっており、各階で確実に宝箱を出現させて、アイテムを入手しなければならない。稀に取らない方がいい宝箱もあるのだが、だいたいは取った方がいいor取らなきゃクリアできないアイテムが入っている。
例えば一面の宝箱から出てくるアイテム「カッパーマトック」はツルハシで、壁を一回壊すことが出来るし、2面のアイテム「ジェットブーツ」はギルの動きが速くなるといった具合だ。
とくに、2面のジェットブーツは、これなしではギルが極めて低速移動をするためクリアは不可能。というより、2面のジェットブーツをとってから、やっとマトモなゲームになるといっても過言ではない。
ちなみに19階で手に入る「ブック・オブ・ライト」。
ぼくはこのアイテム、ゲーセンで一度取り忘れて上の階に行ってしまったことがある。
これやると何が起こるか知っている人、どれくらいいるんだろう?
説明書きではこのアイテムの効果は「フロアが明るくなる」みたいなこと書かれいるけど、もし取らずに上の階に行った日には、ゲーム画面が真っ黒になるのである。
その真っ黒な画面の中に、ギルと敵と扉と鍵があるのみ。こんなんでクリアできるかーい!な罰ゲームが発動する。
で、ゲーセンでこのアイテム取らずに上の階にいったぼくは、てっきり機械が壊れたと思って、お店のお兄さんを呼んだことがあります。
「画面が映りません!」って。
これは、果たして「ドルアーガあるある」なのか否や。
でも、60面まであるから、途中から宝箱も機械的に出すようになってしまっているんで、果たしてそれがどんなアイテムか分からず、気づいたらソーサラーの炎に対していつの間に無敵になってた……とかよくあったなー。
そして当然この宝箱の出し方、上に行けば行くほど、難易度があがる。
例えば、『リザードマン,ハイパーナイト,ミラーナイト,ブラックナイト,ブルーナイトの順で倒す』という宝箱出現方法。
一見簡単そうに見えるが、これがなかなかの難易度。
まず、リザードマンとハイパーナイトは強い。そしてブラックナイトとブルーナイトは弱い。これは基本、強いやつから倒せということなのだが、こういうときに限って、リザードマン(強、先)とブルーナイト(弱、後)が重なって歩いていて分離しない。この二人組を同時に剣を出して攻撃すると、当然弱いブルーナイトだけ死んでしまう。それじゃー宝箱でない。
おめーら、早く分離しろ!と叫ぶのだが、これ、こっちでどうにか出来るもんでもなく、時間ばかりが過ぎてゆく。そうしている間にフロアを駆け回るミラーナイトが……。
そう! この真ん中あたりの順番のミラーナイト!
異様に動きが速いんだ、こいつが。
ミラーナイトは基本ギルと同じ力を持っているので、こちらがジェットブーツを取っている以上、こちらと同速度で移動するのわけだが、体感ではギルの倍くらいの速度に感じる。変な位置に立つと、高速で追尾してきて、もうそうなると、こちらも覚悟完了させて戦うより他なし。だが、このミラーナイトを倒す順番は真ん中。
これまた難易度が高い部分。
一方逆に、簡単に宝箱が出る階もあった。それは伝説の31面の宝箱出現方法。まさかの「スタートボタンを押す」。これ、自力で見つけた人、いるんだろうか?
ひとつひとつのアイテムを手に入れてゆくと、ギルの姿がだんだんカッコよくなっていき(ドット絵だけど)、角が生えたり、盾にラインが入ったり、剣を抜く速度が速くなったりと、明らかなパワーアップを経てプレイヤーは最上階を目指すことになる。
もちろんアーケードゲームだから、途中セーブなんてものは無く、そこは連コインしかないのだが、それが却って興奮を呼んだ。
21世紀になったいまでも、たまにこの『ドルアーガの塔』はプレイしたくなる思い出のゲーム。
やがてゲーセンからは消え、いやゲーセン自体が消え、アーケード版をプレイできることは少なくなったが(実は秋葉原等ではできなくもない)、のちに発売されたファミコン版でクリアし、プレステ版でクリアしと、ハードが変わって発売されるたびに、クリアしてきた本作である。ただし、コンティニュー回数はだんだんと増えていったが。
そして、最近3DS版をダウンロードしてプレイしたら、なんとクリアできなかった。
ラスボス、ドルアーガに会うことすらできなかったのだ。
一体あの頃のぼくは、敵ウィザードが放つ4方向+1の呪文のオールレンジ攻撃をどうやってすり抜けたんだろう? 一瞬しか姿を現さないあのオレンジの魔術師をどうやって全滅させたのか?
そしてそののちに出現するドラゴン「クォックス」の吐き出す炎の射程の長さ! あんなのどうやって仕留めたんだ?
と、ちょっと首をかしげる今日この頃である。
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