第31話 スーパーにゃんこ ③

オープン一週間前、

スタッフとしてロシアンブルーのイワンと

マンチカンのハルカが、猫カフェ『にゃんこの館』に

参加することになりました。


そのほかに、

スコフィッシュフィールドのおじさん猫

バロンもお店で預かることになっています。


猫カフェ『にゃんこの館』

スタッフ猫が勢ぞろいでっす!!



しかしオープン直前、

スタッフのイワンが風邪を引き

熱を出しました。


あっちこっちいじられて

注射をされるかもしれない……怖い!


イワンは病院に行くのを嫌がって

病気なのに逃げ回っています。


フロアーマネージャーは、

スタッフの健康管理も大事なお仕事です。


駄々をこねるイワンを説得すると、

ミーコも付き添いとして

一緒に病院へ行くことになりました。



青空動物病院は、

美弥さんの行きつけの病院で

腕のいい獣医だと評判です。


幼馴染のお父さんがやっている病院で、

息子のわたるくんもインターンとして手伝っています。


青空動物病院の待合室は、

いつもペットをつれた飼い主たちでいっぱい!

自分のペットの診察を待っています。


その中、猫を抱いた中年の女性が

ハンカチで顔を覆って、泣いていました。


抱かれているのは牝の牛猫で

老猫ですがきれいに手入れされて、

とても大事にされていたことが分かります。


……ですが、その猫は痩せ細っていて、

憔悴しきって、意識も朦朧もうろうとしているみたい。


かなり重い病気のようで

余命いくばくもない……といった感じでした。


この飼い主は、

ペットの死期を悟って泣いているようだった。

長い間、この猫を家族のように思い、

お互い支え合って生きてきたのだろうか?


イワンと一緒のゲージに入っていたミーコは、

病気の牝猫と目が合った。


苦しい息の中、かすかに笑みを浮かべ。


弱々しい声で、


「むかし……あなたと……

よく似た三毛猫を……しってる……」


その声を聴いた時、

なぜか懐かしい感情が溢れてきました。


どこかで会ったことがあるかも!?


「すてきな恋をして……仔猫を、

生んだこともあった……の……」


――そういうと、

ミーコをじっと見つめながら瞳を閉じる。


そして、飼い主に抱かれたまま

ひっそりと息絶えてしまった。


むかし、むかし、仔猫のころ


「おまえのお母さんは牛猫だった」と、


お父さんに聞いたことがあった。


もしかしたら……!?



青空動物病院でのことがあってから、

ミーコは思い悩みました。


猫と人間では命の長さが違うことを――。


どう頑張っても

猫は人間ほど長くは生きられない。


ミーコと美弥さんは、

楽しい時も、悲しい時も、どんな時でも

家族として支え合って生きてきました。


けれど自分が亡くなった後、

美弥さんを支えてくれる存在を作って欲しい。


最近、幼馴染の亘くんと

月に二、三度はデートをしているみたい、

将来、美弥さんの家族になってくれればいいなぁー

と、密かに思っていたりします。


ミーコはいつだって

美弥さんの幸せを願っています。


そこには唯一、

生き物を超えた“ 家族愛 ”があるのです。

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