第21話 冒険にゃんこ ①

猫カフェ『にゃんこの館』には

個性豊かなスタッフがいます。


スコフィッシュフィールドのバロンは

英国生まれのジェントルマン

世界中を旅してきた


冒険家にゃんこなのです!


       *


諸君に吾輩の話をしよう!


吾輩は英国生まれのスコフィッシュフィールドという猫である。


1961年、スコットランドのテイサイドという村の農家で

一匹の白猫が生まれた。


スージーと名付けられ牝猫には変わった特徴があった。

それは他の猫のように三角に耳がピンと立っていない耳折れ猫だった。


そのスージーこそが

耳折れ猫一族スコフィッシュフィールドのご先祖様なのだ。



原産地はスコットランドであるが、

吾輩はロンドン生まれのジェントルマンだ。


吾輩の最初の飼い主は、サー・トーマス・シンプソン卿という

英国貴族で、考古学博士&冒険家だった。

彼と吾輩はまるで朋友の如く、一緒に世界中を旅してまわったのだ。


アフリカ、インド、南アメリカ……

世界中の秘境や密林の中を

勇猛果敢にシンプソン卿と吾輩は入っていったのである。


冒険は怖くないかって……? 


いいや、血沸き肉躍るとはまさにこのことで、

冒険を前に吾輩たちに怖いものなどなかったのだ。


わっはっはっは!



猫カフェ『にゃんこの館』では、

スコフィッシュフィールド

バロンの自慢話が始まります。


お店が終わって、夜の食事を終えた時間、

それぞれのゲージに戻されるまでの自由時間を

にゃんこスタッフは仲間たちと楽しい時間を過ごすのです。


そんな時、世界中を見てまわったという

冒険にゃんこバロンの話をみんなが聴きたがります。

外の世界をしらないスタッフ猫にとって、

バロンの物語はとても刺激的でした!


ユーモアがあって、穏やかな性格、話好きバロンの周りには

いつの間にか〔猫の輪〕ができています。


その中心でスコフィッシュフィールド特有の

「人間のような」「プレーリードッグのような」

まるで弟子たちに仏法をするお釈迦様のみたいな

恰好で座っているのです。


この風変わりな座り方は『スコ座り』と呼ばれています。



「さて、今夜はどんな話が聴きたいかね?」

「ネス湖のネッシーの話」

「ヒマラヤの雪男の話をしてよ」

「あたしはアマゾンの大蛇がいい」


バロンにいろんな話をせがみます。


「エジプトのピラミットの話が聴きたい!」


ロシアンブルーのイワンがひと際大きな声で言いました。



利かん坊でイタズラっ子のイワンですが、

バロンの冒険話を大好きで、

その時だけはいつも大人しく聴いています。


「そうか、そうか。では、エジプトの話をしよう!」



エジプトと聴いて、アビシニアンのナイルの耳がピクリとします。

猫タワーのてっぺん、孤高の猫ナイルは聴いていないようで……

実はバロンの話には聴き耳を立てていました。


わくわくするにゃんこスタッフたちを前に、

バロンが冒険談を語り始めます――。


         *

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