第20話 仔猫ころころ ②

仔猫たちが里親に引き取られる件は、

フロアーマネージャーのミーコさんを通して、

スタッフ全員に伝えられました。


天使のような仔猫たちが気に入っていたので、

みんなガッカリして……。


特にマリリンは仔猫たちへの愛情が深く、

ショックのあまり餌も食べずションボリしています。


果たして仔猫たちが大事に育てて貰えるだろうか?


引き取られる先のお客の様子を知っているだけに不安が募ります。


――いっぺんにお店の空気が重くなりました。



そんな中、蘭子が叫んだ。


「アタシたちが仔猫を守るんだ!」


「そうだ! 仔猫たちは渡さないぞ!」


にゃん太も気炎を吐いた。


その意見にスタッフ全員が大賛成しました。



ミーコさんを通してオーナーの美弥さんに、

みんなの意見が届けられました。


猫カフェ『にゃんこの館』のスタッフは

仔猫たちの餌代を稼ぐために、

全員で毎日一時間サービス残業をやることに決めたのです。

そしてお客様獲得にいっそう営業努力をすることを条件に、

仔猫たちの引き渡しを全員[拒否]したのです。


にゃんこたちの熱い思いに美弥さんは感動しました。


正直、あの女性に渡すのは相当不安だったので、

やっぱり断わろうと決心しました。


……しかし、仮に断わるにしても、やはり理由が要ります。



翌日、仔猫の引き取りにきた女性に、

一応、仔猫たちを飼う環境について質問してみました。


女性の話では、

住宅はワンルームマンションでペット不可。

夕方から深夜にかけて水商売をしているので留守。

また外泊も多いとのこと――。

自分以外にも不特定の同居人がいるが動物には興味がない。


……ということでした。


この女性の話を訊いて、美弥さんは呆れ返ってしまいました。

猫を飼うための飼育条件があまりに劣悪過ぎるからです。


「猫を飼うための環境が整っていません!」


美弥さんは仔猫の引き渡しをキッパリ断わりました。


それに対して、

「約束が違う!」とか、「猫餌も買ったのにどうしてくれる?」と、

散々ごねて、大声で喚き立てます。


結局、美弥さんから迷惑料として一万円をせしめて、

それでやっと帰って貰ったのでした。



噂では彼女のブログに、

猫カフェ『にゃんこの館』の誹謗中傷が

散々書かれていたようです。


それに対して同意するコメントや

「イイね」もたくさん入っていましたが、

しょせんネットは一方通行の発信ですから……


美弥さんは気にしない!


お店の評判を落としても、

あのヒステリー女から仔猫たちを守ったことに

今は安堵しています。

安心できる飼い主にしか仔猫たちを渡さないと

美弥さんは決意しました。


スタッフたちも猫たちのことを

一番に考えてくれるオーナーには感謝です。


どんな悪評が立っても、スタッフのサービスで、

そんなものは跳ね返してみせる。


「今日も張り切っていこう!!」


にゃん太の掛け声でスタッフ全員に気合が入ります。


猫カフェ『にゃんこの館』では、

猫たちと触れ合いたいお客様を

にゃんこスタッフ一同


心よりお待ちしております。



(ω゚∀^ω)ニャンニャーン♪

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