3. 予定通りのハッピーエンド

 「わあ……綺麗ですね!」

 「ええ…」

 2人して憧れていた地下レストランを出ると、もう空に太陽の姿はなかった。代わりに街並みが色とりどりにライトアップされていて、賑わいは昼間とまったく変わりない。パレードに向けた場所取りなのか、むしろ通路に人が増えた気さえして、僕は自然と樹さんの手を握っていた。腕時計に目をやると、すぐ後ろをついてくる彼女に向かって呼び掛ける。

 「樹さん」

 「は、はいなんでしょう」

 「そろそろ例の散歩の時間を迎えるわけですが」

 「そ……そうですね」

 彼女も勿論承知の上だが、改めて話を振られると緊張しきった様子を見せる。けれど、もし本当に嫌がっているのならきっと進言してくれるはずで、それだけの信頼関係を今日までに築けたから僕たちは今こうして2人でいるのだし、これからその信頼関係をもっと強固で特別な結びつきにするために今こうして歩いているはずだ。

 その前に、この期に及んで僕にはまだ隠していることがあった。

 「先程はお伝えしませんでしたが、もし良いお返事をもらえた場合、できればその場で貴女をハグしたいと思っています」

 「へっ……??」

 「許されるのであればキスも」

 「?!?!?!?!?!?!」

 「到着までに考えておいてくださいね」

 唐突な宣戦布告の衝撃で足を止めそうになる樹さんの手を引いて、笑顔の僕は人混みを縫って青く光り始めた城を目指す。


 ――僕たちは、もう少しで恋人になる予定だ。

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