第58話 日記

僕は、日記をつけたことがない。

いや、つけようとしたことは、ある。

でも、一度も続かなかったし、日記帳など残っていない。

捨ててしまったのだろう。

それすら定かじゃない。

最近、なぜか、また、日記をつけようかなという気になってる。

物覚えも悪くなったし、忘れたくないという想いが強くなった。

会話の一つ一つまでは、記録できないけど、

いつ、どこで会ったかくらいは、なんとか書ける。

頭に残っていることを数行、書き留める。

メモ帳や、そこら辺の紙の断片に走り書きして、あとでノートに書く。

日記帳なんて買うと、また書かなくなってしまう気がして、

安いノートで十分だ。

この記録を将来、君が目にすることはあるのだろうか。

だといいな、という淡い想い。

身の程知らずの、妄想だ。

若いが、口の達者な君は、僕が相槌を打つ間も無く、次の話をする。

とても憶えられない。

君の楽しそうな、話ぶりに僕はなんとなく微笑んでしまう。

こんな気持ちになったのは、何年ぶりのことだろう。

あなたがなくなってから、忘れていた。

もうちょっと、今の自分を楽しんでいたい。

あなたは、きっと許してくれるよね。

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