第2話 あなたへ
あなたが先に逝くとは思わなかった。
先に逝くのは僕だと、ずっと思っていた。
あなたもそう言っていたし、僕もそう信じていた。
僕が逝って、その後始末が終わって、あなたは人生の残りを楽しんでから僕のところに来るのだと思っていた。
そのあなたが今、先に旅立った。
僕はひとり残された。
あなたが一人になったら、やりたいと思っていたこと、僕のためにやり残してしまったことを、僕は知らない。
僕は、あなたと居て、幸せだった。あなたは、どうだったのだろう。
僕は不安になる。
あなたを想い、僕のこれからを思い、僕はいま立ち尽くしている。
家を出て、あなたに出会うまでのわずかな時間を除き、僕は飯さえ炊いたことがない。
僕は、そのすべてを、これから自分でやっていかなければならない。
途方もないことのように思う。
あなたが僕のためにやってくれていた日常の一つひとつが思い出となり、僕にのしかかってくる。
あなたは、そのひとつひとつを僕のためにやってくれていた。
僕は、これから、誰のためでもなく、僕にために日常のひとつひとつを為すのだ。
本当にできるのだろうか。
僕はあなたを思い、立ち尽くしている。
そして、僕のこれからを思い、暗澹たる思いになる。
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