第38話 厭きる

この世界

ちっぽけな自分の力では、どうにもならない。

不幸や苦しみ、争い、妬み、怒りが溢れている。

失望や哀しみ、無気力、倦怠感、独りよがりを日々生み続ける。

希望を語る言葉は、陳腐で、心に響かない。

悲しみに涙を流すことの方が多い。

言葉が現実から乖離している。

ほとんどの言葉は、電磁的に飛び交い、人の口から発せられることは少ない。

言葉から真実は失われた。

空虚な空間を、空虚な言葉が埋め尽くしている。

批判や非難、攻撃、罵詈雑言もたくさんある。

しかし、人には素晴らしい特性がある。

人は厭きる。

同じことを永遠に続けることはできない。

たまたま起こった一つの不幸が非難され、多くの苦しみを受け、追い詰められ、死に至る。

誰もがそんな崖っぷちを歩いている。

被害と加害は、常に入れ替わる。

勝者はいない。

だが、人はそんな状況にも、いつかは厭きる。

そのさきにあるもの。

長くは続かなくても、きっとあるもの。

他人を追い詰めることをやめる。

愛さなくてもいい。

そこにいることを認め合う。

そんな世界。

僕は歩いて行く。

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