第18話 過去

喧騒の中にいる。

関わりのない人びとがそれぞれに話し、

それぞれに聞き、

輪をかけて声を上げる。

僕はひとり静か。

電車の中

街角

空港

僕が巻き込まれることはない

誰の目にも、耳にも、僕はいない。

誰にも同じように、過去がある。

思い出もある。

思い出したくないものもある。

叫びたくなる。

泣きたくなる。

いたたまれなくなる思いもある。

でも、もう戻らない。やり直しもできない。

喧騒の中に、一人でいる時、ふと脳裏によぎる。

じっとしていられなくなる。

走り出したくなる。

大声をあげながら。

でも、僕はひとり静か。

ひとり耐えている。

この苦しみの過ぎ行くまで。

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