第52話 働く

自分ひとりであっても、

食べていくためには働かねばならない。

子供の頃に、ゴミ箱を漁り、食パンの切れ端を食べていた人を見たことがある。

その記憶が邪魔をして、同じ行動ができない。

働くといっても、人生の軌道を外れた人には、そんなにいい場所はない。

僕も、一旦、外れた。

誰かのために働いていたのは、遠い昔の話。

随分と経ってしまった。

自分ひとりになって、

気ままに生きたいと思う。

食べていくことが、唯一の障害。

野宿をしたり、公園のトイレの水道で体を洗ったり、

区立図書館で本を読んだり、

食べる必要さえなければ、割と気ままに過ごせる。

ゴミ箱を漁らずに食べていくためには、

食い扶持が必要。

今の自分にできることは何か、と

痛切に思い知らされる。

でも、生きている限り、

食べていかねばならない。

食べずに何日生きていけるか、なんて試す気は無い。

気ままなんて、そう続けられるものでもないんだ。

そうして、また、新しい日常に戻っていく。

あなたのいた時の生活とは違うけど、

これもまた、僕の日常。

ゴミ箱を漁らずに食べていくためのやり方。

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