概要
ある日訪ねてきた見知らぬ女に、猫を差し出される。
——「ねこ探しています 鶴森ハルオ」
誰かが勝手に自分の名前と住所を使ってチラシをつくり、迷子猫を探して雑司が谷じゅうにばらまいているらしい。身に覚えはないものの、なし崩しに猫を預かるはめになるハルオ。
犯人探しの探偵ごっこをしながら、猫に手を焼き、無職になり、女と距離を縮めていく。そんな日々を過ごすうち、預かった猫がいなくなってしまい…。
2015年11月に発表した同人誌です。完売後半年経過したのでカクヨムにアップしてみます。
全13話、豊島区雑司が谷らへんをうろうろする、恋愛未満コメディです。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!人生は愛おしい!
わたしが若かったころ、ときどき街の小さな映画館で、一週間しかかからないような映画を観るのが好きでした。
アクションや劇的なラブストーリーなどではない、でもたしかにそこには人生の悲哀ややさしさを感じる静かな映画。
エンドロールがおわってビルの(そういう映画館は、えてして雑居ビルの二階などにあるのです)階段を降りるとき、わたしのちっぽけな人生は、かけがえのない愛おしいものとして目にうつるのでした。
「猫を飼う」を読み終えたとき、まさにあのときの、ふだんと変わらない世界がキラキラと輝くような感覚が蘇りました。
東京・雑司ヶ谷という土地に土着した、静かな、でもたしかにドラマチックな物語。
友人の死…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あわいの街・雑司が谷で、ピンク色の人生に出会おう
私が仕事で雑司が谷に行ったとき抱いた印象は「あわいの街」でした。
たとえるなら、赤と白の水彩絵の具を溶かした水が混ざり合うとき、真ん中にできるメヨメヨっとした部分、みたいな街。
路面電車(都電荒川線)が走り、しっぽりした喫茶店や古本屋があって、まるで都心とは思えないのどかさですが、池袋に近いので北の空を見上げるとドカーンとサンシャイン60が建っていますし、東京メトロ副都心線の雑司が谷駅はとてもキレイで都会的です。
猥雑な繁華街と閑静な住宅地、彼岸と此岸、生と死、それらが混じり合う境目に、雑司ヶ谷という街があるように思ったのです。
そうそう、無数の死者が眠る雑司ヶ谷霊園は、それだけで彼岸に近い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!Welcome to ワンダーランド・雑司が谷
これこそ文学というものなのではないか!?と思いました。
あるいは哲学です。
多くのひとに読んでもらって「これは何のメタファーだったんだと思う?」と聞いてまわりたい一作です。
「これは何だ!?」「あれはどういうことだったんだ!?」という事象がたくさん散りばめられていて、いろいろ考えながら読んでいたんですけど、読み終わった今思い返すと、そうか、なんだかよく分からないけど、そういうことだったんだ、みたいな謎の満足感で満たされます。
ストーリーにはそんなに変わったファンタジーはありません。
雑司が谷は実在の町だし、描写からして何となくうらなりも迷亭も銭湯も実在するんだろうと思うし。主人…続きを読む