概要
織田信長が死に、明智光秀が死んだ。
細川忠興は彼らの死に様に憧憬する。
忠興は烈しいものが好きだ。
炎の烈しさを持った信長と氷の烈しさを持った光秀を、忠興は敬慕していた。
忠興の妻、珠もまた烈しく美しい女だ。
珠は光秀の娘。
天下の反逆者の血を引く珠を、忠興は誰の目にも触れぬよう、丹波の山奥に隠している。
戦国時代随一のヤンデレ、細川忠興の視点を介して綴る異説本能寺の変。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!華々しく舞う狂気
忠興と珠の関係は、読んでいて胃が痛くなる。他人よりの承認なくば満たされない凡人からすれば、その拒絶にこそ美を見出すかの超人に感嘆し……まぁ、ああはなれないし、なりたくもないよなあ、とも思うのだけれども。
体は許しても、一切忠興に心開くことがかなった珠。乱世で女性の「個」が認められなかったその時代に、あまりにも高く聳え立つ矜持にのみ従い、己を貫き通している。その強さは、しかし、あまりにも悲しい。
息が詰まるほどの誇り、むせ返らんほどの狂気。信長と光秀という、大いなる「安土桃山」を失ったその先の世に取り残された二人は、共に身の置きどころを見失ってしまったようにも映った。
ほとばしる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!熱く生きた、何処までも。そういう男の、愛し方
先ず、私は歴史に全然詳しくありません。どの位かというとですね…長くなるからやめておきます。
私は歴史に詳しくありませんが、決断は早いのです。
今作の主人公である細川忠興、格好良かったです。
彼の格好良さが分かる人は、きっと高い精神性を有している、と言えるかなと思います。
或いはこの話を読んで精神が育まれて、分かるようになるのかもしれません。
彼の人物としての良さは、彼が持つ信念に裏打ちされたものでありましょう。
真っ直ぐ過ぎるが故に、その往く道と歴史の流れ(戦国の世が終わっていく流れ)との差異で、熱さと狂気を内包しているのですが…
良いですか? 今から私が凄くタメになる事を言います…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ちりぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ
その数奇な運命と生き様、そして、辞世の句で世に知られる細川玉(ガラシャ)と、その夫、忠興が繰り広げる愛憎相半ばのものがたりです。
戦国時代という時代においても、その苛烈な性情で知られるふたり。
ふたりの関係は、本能寺の変によって大きく変わります。
主君である織田信長を殺めた明智光秀の娘である玉、そして、織田信長の家臣であるとともに、主に深く敬愛の念を抱いていた忠興。
そのふたりがぶつかり合い、導き出した本能寺の変の真実とは。
歴史上のエピソードや人物像のツボを押さえ、独自の解釈であらたな物語を産み出す語り口に惚れ惚れします。
そして、あえてキメ台詞でもある玉の辞世の句言ってくれない…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ヤンデレ戦国武将、細川忠興を「人間」として紐解く難易度の高い試み
僕はヤンデレ史に詳しくないのですが、体感的な印象としては世間でヤンデレ属性が注目され出したのは『School Days』の桂言葉からです。そこに『ひぐらしのなく頃に』の園崎詩音や『未来日記』の我妻由乃が続いて地位を築いて行ったイメージ。
それでこのヤンデレ共がなんかやたら日本刀を使うんですよ。桂言葉は言うまでもないし、我妻由乃も使ってたはず。ヤンデレの定義に「日本刀を使う」は別にありません。ただ「こいつにこれ持たせちゃアカン」という非日常の殺人道具を敢えて持たせることで、触れがたい狂気をビンビンに演出しているわけです。
では日本刀が「日常」だった時代のヤンデレはどうだったのか。
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