狂愛烈花

作者 氷月あや

60

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★★★ Excellent!!!

 忠興と珠の関係は、読んでいて胃が痛くなる。他人よりの承認なくば満たされない凡人からすれば、その拒絶にこそ美を見出すかの超人に感嘆し……まぁ、ああはなれないし、なりたくもないよなあ、とも思うのだけれども。

 体は許しても、一切忠興に心開くことがかなった珠。乱世で女性の「個」が認められなかったその時代に、あまりにも高く聳え立つ矜持にのみ従い、己を貫き通している。その強さは、しかし、あまりにも悲しい。

 息が詰まるほどの誇り、むせ返らんほどの狂気。信長と光秀という、大いなる「安土桃山」を失ったその先の世に取り残された二人は、共に身の置きどころを見失ってしまったようにも映った。

 ほとばしる情念。その激しく生きる様には、ある種の憧れを抱く。心に抱いたものに対し、もっと夢中にならねば。そう思った。

★★★ Excellent!!!

 登場人物がことごとく読み手に強烈な印象を与える、いくつもの炎が互いを煽りあっているような作品だと思います。忠興の激しくもねっとりとした狂愛、珠の冷ややかでいて苛烈な意思、伊也の一途すぎるゆえの憎悪……人の括りから外れていそうな感情の激しさと死への渇望は、愛ゆえのものか。愛に狂った花の競演が目に焼き付きました。

★★★ Excellent!!!

先ず、私は歴史に全然詳しくありません。どの位かというとですね…長くなるからやめておきます。
私は歴史に詳しくありませんが、決断は早いのです。

今作の主人公である細川忠興、格好良かったです。
彼の格好良さが分かる人は、きっと高い精神性を有している、と言えるかなと思います。

或いはこの話を読んで精神が育まれて、分かるようになるのかもしれません。

彼の人物としての良さは、彼が持つ信念に裏打ちされたものでありましょう。

真っ直ぐ過ぎるが故に、その往く道と歴史の流れ(戦国の世が終わっていく流れ)との差異で、熱さと狂気を内包しているのですが…

良いですか? 今から私が凄くタメになる事を言いますよ。

本気で狂っているヤツは、自分が一番真っ当だと思っているものなのです!(バーン!)

この細川忠興は正にそれ!
だからずっと格好良い!

歴史を感じるという意味では、熱い精神を持った男達の歴史のほんの一幕でも、この小説で感じてみてほしいですね。

ほんの一幕でも、もう火傷する程の熱さですから。信念の熱量を、感じてください!

★★★ Excellent!!!

その数奇な運命と生き様、そして、辞世の句で世に知られる細川玉(ガラシャ)と、その夫、忠興が繰り広げる愛憎相半ばのものがたりです。

戦国時代という時代においても、その苛烈な性情で知られるふたり。
ふたりの関係は、本能寺の変によって大きく変わります。
主君である織田信長を殺めた明智光秀の娘である玉、そして、織田信長の家臣であるとともに、主に深く敬愛の念を抱いていた忠興。

そのふたりがぶつかり合い、導き出した本能寺の変の真実とは。


歴史上のエピソードや人物像のツボを押さえ、独自の解釈であらたな物語を産み出す語り口に惚れ惚れします。

そして、あえてキメ台詞でもある玉の辞世の句言ってくれないさじ加減。物語内の玉と重なり、絶妙なもどかしさを醸し出します。いじわるめ。

だから声を大にして言います。歴史好きの皆さん!ここに皆が大好きなガラシャと忠興がおるぞ!期待通りにやべー奴だぞ!ハナハナでヒトヒトぞ!

歴史物好きな方は無論のこと、そうでないかたも是非ご一読を。

★★★ Excellent!!!

その死に様が語られる事の多い、細川ガラシャ。
彼女の苦悩に満ちた生き様に、夫の狂気じみた愛欲が絡まる。

日本史が動いたその瞬間に、丹後の片隅でやり取りされる意地と愛欲の応酬は、確かな歴史観に支えられ、見事な描き方をされている。

著者様らしさが全面に押し出された、繊細で、大胆で、狂おしい世界。
私もこんな風に書けたらなぁ、なんて到底及ばぬ妄想を抱く。

歴史に詳しくなくても、問題なく楽しめると思います。
是非ご一読あれ!

★★★ Excellent!!!

苛烈な精神を持つ夫と数奇な宿縁の美貌の妻の物語。
日本史上においても稀にみる特異さで有名な夫婦が、この作品のなかで息づいています。
史実に基づいた確かなストーリーに、登場する人物たちの感情がのせられていて、読むものを歴史の一幕へとタイムスリップさせてくれるよう。
とても楽しませていただきました。

★★★ Excellent!!!


私は少し、いやかなり歴史に対して苦手意識があり、努めて触れるも上手く飲み込めないことが多く、恥ずかしながら忠興という人物を初めて知ったほど軟弱なのですが、当作品はのめり込んで読了することができました。
豊かで繊細な筆致で描かれる狂愛、高度で品のある人物のやり取りにグッと烈しく惹かれるところがありました。
1人の人物の濃密な生涯を描いた短編です。私のように歴史小説を敬遠しがちな方にオススメしたいです。

★★★ Excellent!!!

 僕はヤンデレ史に詳しくないのですが、体感的な印象としては世間でヤンデレ属性が注目され出したのは『School Days』の桂言葉からです。そこに『ひぐらしのなく頃に』の園崎詩音や『未来日記』の我妻由乃が続いて地位を築いて行ったイメージ。

 それでこのヤンデレ共がなんかやたら日本刀を使うんですよ。桂言葉は言うまでもないし、我妻由乃も使ってたはず。ヤンデレの定義に「日本刀を使う」は別にありません。ただ「こいつにこれ持たせちゃアカン」という非日常の殺人道具を敢えて持たせることで、触れがたい狂気をビンビンに演出しているわけです。

 では日本刀が「日常」だった時代のヤンデレはどうだったのか。

 そこで登場するは戦国時代を代表する男ヤンデレ、細川忠興。某所では戦国DQN四天王と言われるぐらい有名な武将なので知っている人は知っていると思いますが、彼はとにかく妻である珠(洗礼名ガラシャ)を愛しすぎています。例えば、妻と目が合っただけの庭師をさっくり殺したりとかします。「俺の妻を視線で汚すな!」みたいな感じで。何なんでしょうねこの人。何考えてるか分かりませんね。何考えてるんでしょうね。

 それに正面から切り込んだのが、本作『狂愛烈花』です。

 キャラクター性の高い細川忠興という武将を、そのキャラクター性に着目しつつ人間として描き出す難易度の高い試み。並の知識や筆力では空中分解するしかないその挑戦を、本作は見事しっかりと成立させています。細川忠興という男の苛烈な激情。珠という女の聡さと艶やかさ。その両方が高い表現力で鮮烈に表された結果、行われていること自体はやはり理解出来ないのにどこか「納得」してしまう。「ヤンデレ」の物語ではなく「愛」の物語である。そう言えるだけの力を文章が備えています。

 忠興は、珠は、お互いに何を欲し、何を手に入れようとしていたのか。本作にその答えは記され… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

長岡(細川)忠興が、愛妻であり明智光秀の娘でもある珠に語る、彼が見抜いた本能寺の変の真実。忠義なるがゆえの謀反。ゆえに「順逆二門無し」。
あくまで、信長と光秀の両方を父のごとく敬愛する忠興の視点から見た真実ですが、それが説得力を持って迫ってくるのは、忠興の持つ覇気と狂気が丹念に描かれ、そして、その覇気と狂気が信長の持つそれと相似形を為しているから。それと同時に、忠興が信長に向ける忠誠と冷静な観察眼が、光秀のそれと相似形を為しているから。
そんな覇気と狂気、忠誠と冷静を併せ持つ矛盾の塊、長岡忠興を余すところなく活描した傑作です。
それと対峙するヒロイン、珠もまた光秀譲りの怜悧と賢明をもって忠興の前に立ちはだかります。忠興の狂気を冷たく見据え「私を殺しなさい」と言い放つ珠の何と魅力的なことか!
それがまた、もうひとりの「女」、愛する夫を謀殺した忠興を殺そうとする実妹の伊也との鮮やかな対比となっています。
信長、光秀、忠興、細川ガラシア夫人こと珠、この誰かが好きなら、ぜひ読んで見てください!

★★★ Excellent!!!

 作者の氷月あやさんは、新選組を題材にした小説を書かれており、前からのファンである。若者向けの著作が多いが、私自身は歴史小説的な文体が好きで、そのうち戦国時代物を書いてもらえないかと思っていた。今回それが実現され、とても嬉しい。

 細川忠興――戦国武将の中では最も狂気に満ち、苛烈だった人物と言われる。
 愛刀は歌仙兼定。その刀で36人もの家臣を成敗したことから、三十六歌仙にちなみその号が付けられた。
 なぜここでその名を挙げたかというと、実は私も歌仙兼定をモチーフに、忠興の愛憎に溢れた生涯を描こうと思っていたからだ。できれば珠(ガラシャ)への愛を主題に、植木職人を成敗した話などを絡ませ創作してみたい・・・そう思っていたが、うまく仕上げられなかった。
 ところが、その思いがいとも簡単に本作で実現されていた。しかも出来映えは私が創造したものより遙か上空を飛んでいた。驚いたの一言である。 

 本作は歴史小説であるが、作中で描かれる忠興の内面は現代の人間にも理解できるように書かれている。歴史小説の雰囲気を漂わせながら、一語一語が官能的に響いてくる。作者の表現力の豊かさには本当に舌を巻く。「ヤンデレ」小説らしいが、もう少し古風な趣がある。
 
 

★★★ Excellent!!!

戦国末期の異端児、細川忠興とその妻である珠との愛を描いた物語。細川忠興は知る人ぞ知る戦国末期の異端児、色々な逸話の残るちょっとオカシイ人物です。その妻、珠はあの明智光秀の娘、別名細川ガラシャの方が有名でしょう。とにかく忠興は珠のことが大好きです、庭師が珠に見とれただけで手打ちにした、というその筋では有名なエピソードも出てきます。

忠興は美しいまま散っていった信長に憧れ、その信長の想いを一人正確に掴んだ義父、光秀にも想いを馳せます。我が妻、珠にも美しいまま散って欲しいと狂う忠興。あの有名な細川ガラシャの自決エピソードの裏に、忠興のこんな狂愛があったとしても不思議ではありませんでした。

「小早川秀秋、忠義とは何か」を氷月様の視点で読んだら面白いだろうな、などと期待してしまいます。

面白い作品を読ませて頂いて、ありがとうございました。