忠興が見抜いた本能寺の変の真実とは!?

長岡(細川)忠興が、愛妻であり明智光秀の娘でもある珠に語る、彼が見抜いた本能寺の変の真実。忠義なるがゆえの謀反。ゆえに「順逆二門無し」。
あくまで、信長と光秀の両方を父のごとく敬愛する忠興の視点から見た真実ですが、それが説得力を持って迫ってくるのは、忠興の持つ覇気と狂気が丹念に描かれ、そして、その覇気と狂気が信長の持つそれと相似形を為しているから。それと同時に、忠興が信長に向ける忠誠と冷静な観察眼が、光秀のそれと相似形を為しているから。
そんな覇気と狂気、忠誠と冷静を併せ持つ矛盾の塊、長岡忠興を余すところなく活描した傑作です。
それと対峙するヒロイン、珠もまた光秀譲りの怜悧と賢明をもって忠興の前に立ちはだかります。忠興の狂気を冷たく見据え「私を殺しなさい」と言い放つ珠の何と魅力的なことか!
それがまた、もうひとりの「女」、愛する夫を謀殺した忠興を殺そうとする実妹の伊也との鮮やかな対比となっています。
信長、光秀、忠興、細川ガラシア夫人こと珠、この誰かが好きなら、ぜひ読んで見てください!

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