氷川竜介「フィルムとしてのガンダム 」

氷川竜介「フィルムとしてのガンダム 」(太田出版 )


ちょうど「坊やだからさ」までなのだけど、「機動戦士ガンダム」の初期エピソードに焦点を当てた演出論と言えばよいだろうか。当時はまだ「世界観」ではなく「設定」という用語だったらしいけれど、「設定を絵で見せる」こと等が詳しく解説されていた。


例えば、第一話でジオン軍に襲撃を受けた住民たちがスペースコロニーの緊急避難用のブロックに逃れるのだけど、アムロが出入りする際、扉が二重ドアであることがさり気なく描かれていて、そこが地球ではなく宇宙の人工的な空間を舞台としていることが説明ゼリフに依らず動画として描かれている。


映像作品のメリットとして、絵なら一瞬で設定が理解できるのだけど、そう簡単な話ではないことはその後の作品でも時々見受けられる。おそらく監督等キーマンの中にビジュアルイメージが無いとそうなってしまうのだろう。


本放送寺、著者の氷川氏は大学生でアニメ業界にアルバイトとして出入りしていた。アニメ雑誌に掲載するカットを選んだりもしていたのだけど、選ばれたのは戦いの最中歪んだアムロの表情が多かった。これは僕自身雑誌で読んだ記憶があって、フィルムを一枚一枚確認して意図的に選ばれたものだと知って驚いた。そういった感情や恐怖・緊張を如実に示す表情が多数描かれているのも1stガンダムの特徴だったかもしれない。


他、記憶しているのでは、外国人記者たちに日本のアニメを説明する際、先ずセルと背景を重ねたものを提示(※ホワイトベースの艦橋でブライトが指揮しているカット)、そしてそこに枠を当てはめると、途端にそれらしく見えて驚かれたことなども記されていた。

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