沼田やすひろ『「おもしろい」アニメと「つまらない」アニメの見分け方』

沼田やすひろ『「おもしろい」アニメと「つまらない」アニメの見分け方』(キネ旬総研エンタメ叢書)を読む。取り上げられた作品で未見のも結構あって、全てのページに目を通してはいない。


◆一目惚れ

『キービジュアルに「一目惚れ」できるか?』という項目があって、最近の作品だと第一話に必ず作品のキーとなる画を入れてくるのだとか。


実はボーイミーツガールものの(主人公のモチベーションとなる)「一目惚れ」の解説だと勘違いしていた。ここで取り上げられる「一目惚れ」は視聴者である僕たちの一目惚れのことだ。それはキャラデザだったりイメージボードを元に起こされた一枚絵だったりする。


この項を読んでいて思いだしたのが1stガンダム。機動戦士ガンダムのプラモデルは爆発的にヒットしたのだけど、プラモデルに手を入れて名場面のジオラマを作るのが流行った。第1話のビームサーベルでザクを仕留めたガンダムとか、赤ズゴックに腹をぶち抜かれるGMとか。街のおもちゃ屋さんが主催したコンテストもあって、入賞作は長くショーケースに展示されていた。


「機動戦士ガンダム」はそういう印象深いカットが盛りだくさんだった。それ以降のシリーズでジオラマが流行ったかどうかは知らない。一概に言えないけど、初代ガンダムは地上戦が多いのもあったのだろうか。そういう意味ではライダーのみならず、ロボットも飛んじゃいけないのかもしれない。


◆リマインダー主義と筋立て主義

この本では、(それを見た)視聴者の感情を揺さぶる画創りを感情リマインダーと定義している(※リマインダーという言葉自体はハリウッドの脚本用語か)。例えばセリフに頼らず画そのもので感情を揺さぶることのできる人は優れた演出家だろう。


で、

リマインダー主義:リマインダーのみを重視して筋立てを重視しない

筋立て主義:リマインダーも筋立ても重要視する

と分類している。


リマインダーと筋立てとを両立した優れた作品として、ジブリ映画(※「ハウルの動く城」以降はリマインダー主義に傾いていくと解説している)やピクサー作品を挙げているので、全く逆のベクトルという訳ではない様だ。……両立できたら誰も苦労しないか。


◆継続視聴の決め手

ミステリーとサスペンス、「謎」と「はらはらする危機」を合わせた造語として「ミスペンス」というキーワードが用いられている。単なる謎と異なり、何らかの「危機のある謎」で、これをストーリーの冒頭に持ってくることが継続視聴の鍵となるとのこと。例えば「天空の城ラピュタ」で「シータはなぜ追われているのか?」等。


◆論理骨折

作品中で解決されない矛盾を論理骨折と呼んでいる。論理骨折があると、心に引っ掛かってしまって作品に没入できなくなるのだとか。


◆変化の13フェーズ

ドラマというのは登場人物が変化していくことだが、その変化を納得させるプロセスが13フェーズに分類できるとしている。


第一幕 対立  0:背景(ない場合もある)

        1:日常

        2:事件

        3:決意

第二幕 葛藤  4:苦境

        5:助け

        6:成長・工夫

        7:転換

        8:試練

        9:破滅

       10:契機

第三幕 変化 11:対決

       12:排除

       13:満足


つまらない作品というのは、この13フェイズが不全であるからだとする。基本的には起承転結でなく、三幕構造で物語を把握している。また、13フェイズ構造は入れ子構造になる場合もあるとしている。


しかし、13フェイズというのは記憶しにくい数である。2時間ものの映画や1話30分のアニメならパターンが決まっているが、そもそも創作物の全てにこんな法則が適用されるとするのは無理筋ではないだろうか。

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