飯田一史「ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略」

飯田一史「ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略」(青土社)を読む。


青土社は現代思想などのイメージが強かったので、意外だったが、文芸評論に経営学の視点を持ち込むのは面白いと思う。


読んでいて「二位じゃダメなんですか?」というセリフが頭をよぎった。いや、事業仕分けを象徴するあのセリフは今から二十年後ぐらいになって「近年、日本の科学技術力が衰え始めている」と指摘されて、ようやくその意味が分かることになるだろう。その頃には当の政治家たちはとうに引退済みで……と無責任極まりない話。


閑話休題。


僕はオタク第二世代に属する人間。ただ、兄姉が一回り近く歳が離れていたので、第一世代が好んでいた作品からも影響を受けている。


ハルヒの谷川流も第二世代。これは指摘されていないけれど、僕らの学生時代、ニューアカデミズム(ニューアカ)が流行っていた。谷川氏もおそらくその影響下にあるだろう。


僕自身はSFやミステリーの素養に欠けるけど、ハルヒの憂鬱を読んで「あー、なるほどね」と感心させられたのは、ヒトの認知とか根源的に重なるテーマがあるからだろう。個人的には「作中世界の神でもあるハルヒが内面的に成長・変化したら、あの世界自体が変わってしまうじゃないか」と思う。


今は第四世代のオタクの時代らしい。自分がオタクであることについて屈託のない世代。自分達との違いを考えると、今はテレビが面白くない時代だろう。アニメに限定しても、名作劇場や「まんが日本昔ばなし」から受けた影響が小さい世代。あと、少子化で児童文学全集が売れなくなった時代だ。


今は青空文庫が読めるし、能動的に探せばほぼ入手できる便利な時代でもあるのだけど、第四世代が将来クリエイターとなったとき、どうなるのか興味深い。

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