富野由悠季「映像の原則―ビギナーからプロまでのコンテ主義」

昔、姫路市北の山にある寺院を訪れたときのこと。階段を上がって門をくぐり振り返ると、門扉がカメラのフレームのような役割を果たしていた。姫路市の眺望がまるで絵画の様に見えた。


富野由悠季「映像の原則―ビギナーからプロまでのコンテ主義」(キネ旬ムック)。「機動戦士ガンダム」などで知られる富野監督の著書。アニメ制作で絵コンテによる演出について論じた内容。


ファンの間でも難解とされている本で、初読時は感覚的にしっくりこなかったため、積読となっていたのを読み直した。


まず、脚本、絵コンテ段階でのチェック、直しの重要性を口を酸っぱくして強調している。早い段階で修正した方が後工程に及ぼす影響が少なくなる。これは週一放送のTVアニメという事情もあるだろう。


演出、左と右、舞台でいえば下手と上手が演出の極意らしい。しっくりこなかったのはこの極意。テレビを買い換えて16:9のワイド画面(映画だとビスタサイズ相当か)で映画をみると確かにどういう構図か分かり易いと感じた。逆に昭和時代に制作された作品を観ると、4:3の画面比のカットがきっちりとした構図で撮られていることに気づく。


会話シーンなど両者の位置関係などがそうか――画面を左右に割って双方に話者を配置する。枠に収められた対象と空白が画面に勢いを与えるということだろうか。演劇では大抵左側が下手となるはずだが、心臓が左にあるため、無意識に左側を守るという説があるのだとか。


富野監督の方法論だと下手に位置するのが主人公(挑戦者)という位置づけになる。一方で、東映だと確か仮面ライダーは上手に位置するのだったか。正義の側が上手に位置どる様である。


他、編集にもページが割かれているが、これは実際編集してみないと分からないだろう。


イマジナリーラインも重要である。僕自身はよく実感できないが、イマジナリーラインが通っていないと映像が不自然に見えるのだとか。

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