幕間:フライング・ボムキャッチ!


 警備員を振り切るにはずいぶん時間がかかってしまった。

「クソッ、こんなことで時間を浪費している暇はないというのに……爆発に間に合わなかったら、あの警備員のせいだ!」

 職務熱心な警備員に腹を立てながら校内をさまよっていたオレは、グラウンドに野次馬が集まっているのに気が付いた。

「なんだ? 運動部が試合でもやってるのか?」

 近づいてみると、何やらマウンドに正座して震えているユニフォーム姿の野球部がいる。

「トラブルみたいだな……って、あ、あれは!?」

 その前に立っている学生服の一群のなかに目当ての二人を見つけ、オレは息を呑んだ。

「間違いない。『委員長』と、ピンクのパンツの女子高生だ!」

 ターゲットが二人まとめて見つかるなんて、天はオレに味方しているようだ。

 密かに感動していると、ピンクパンツがバッグの中から見覚えのある包みを取り出した。

 それはまさしくオレのプレゼントボム! 幸い、まだ開封はされていないようだ。

 ホッとした瞬間、野球部の男が突然プレゼントの包みをもぎ取り、振りかぶった。

 

「なっ!? や、やめろっ!!」



 オレの叫び空しく、プレゼントは天高く見事な放物線を描き―――




 よりによってオレめがけて飛んできた。


「な、なぁぁぁぁぁっ!?」


 オレは声にならない叫びをあげ、踵を返すとダッシュした。

 ある程度の衝撃には耐えられるが、さすがに地面に激突したら良くて破損、最悪爆発する。


 覚悟してはいたが、やはり爆発に巻き込まれるのは嫌だ……!


 焦りのあまり、足がもつれてオレはその場に転倒した。

 振り返ると、プレゼント爆弾がオレに迫ってくる。


「う、うわああああああ!!」


 思わず硬直した瞬間、爆弾とオレの間にぶわっと人影が飛び込んできた。


「ええええいっ!!」


 マウンドからダッシュしてきたらしい『委員長』が、空中でプレゼントをキャッチした。


 まさか、一度ならず二度までも彼に命を救われることになろうとは……!


 感涙しかけたオレの上にふっと影が差し、『委員長』がまともに降ってきた。


「えっ、ちょっ…………ぐぎゃっ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る