幕間:おねえさんのおねがい
「クソッ! これだから運動部は嫌いなんだ、野蛮なくせに女にモテやがって……」
警備員の隙をついて逃げ出したオレは、新たな変装のコスチュームに身を包んでいた。
白い割烹着に三角巾。大きなマスクをしていても違和感のない恰好。
今のオレは、どこからどう見ても学食のおねえさんだ。
逃げながらゲットした衣装のため、またしても女装となってしまったが、先ほどよりクオリティは上がっていることは間違いない。
聞き込みで彼らの居所を掴み、校舎裏へ着いたオレが見たものは、不良達が折り重なって倒れている惨状だった。
その中心で、ゴリラのごとき巨漢がプレゼントの包み紙に今しも手をかけている。
まずい!!
あのゴリラが箱を開けたら、アレが実は爆弾であることがばれてしまう!
「ま、待ってえええ!!」
オレは重なった不良どもを踏み台にして、ゴリラの腕に飛びついた。
「ああ!? 何じゃ貴様!?」
「待って! そ、それっ、私のものなのぉぉおっ!!」
オレを振り落とそうと腕を振りかぶったゴリラが、その格好のまま静止した。
「コレが、和泉しゃんのものじゃなくてワレのもんじゃと……?」
「そ、そうなの! 間違って彼女の手元に行っちゃっただけで、それ、私のものなの!」
ゴリラがオレをギロリと睨んだ。
というか、さっきからこのゴリラ、オレが腕にぶら下がったままなのに全く揺らいでない。
「ワレ、何者じゃ」
「わ、私? 見ての通り、学食のおねえさんよ!」
「……おねえさん?」
「いい子だから、それ、おねえさんに返してくれるかな?」
オレをまじまじと見つめたゴリラの顔が、パッと真っ赤に染まる。
オレの女装のクオリティの高さゆえの反応だろうか。意外と純情な奴のようだ。
せっかくだから、少しサービスしておくか。
オレはウインクして見せた。
「もう、そんなに見つめないで、エッチ」
ゴリラの顔がぐしゃっと歪んだかと思うと、いきなり腕が大きく振られた。
「……ワレのようなババアがいるかぁぁぁっ!!!」
「ひっ、ひえええええええええええ~!?」
怒声と共に、オレは思い切りぶん投げられて空を舞った。
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