第11話 そうだ、プレゼント開けよう
「おかえり!! 待ちかねたぞ、委員長!」
委員会室に入るなり、待っていた柿本生徒会長から熱烈な歓迎を受け、僕と伊勢はそろって固まった。
「おお! その手に持っているのは、まさしくプレゼント! さすが委員長だな、よく取り返してきた!」
「え……あ、はい、その、一応取り戻せました」
人間、あまりに予想外のことが起きるとフリーズするものだ。
ポカンと生徒会長を見つめる僕の背を、生徒会長は親しげに叩いた。
「いやあ、お前たちならやってくれると思っていたぞ」
嘘くさい賞賛の言葉を並べる生徒会長の横で、和泉さんがホッとしたように両手を握り合わせた。
「良かった、戻ってきて……ホントにありがとうございます」
「ああ、本当に良かった……俺もホッとしたよ。誰からか分からないが、きっとしのぶへの想いがこもった大事なプレゼントだろうし」
「ええ!? さっき危険物とか言ってませんでした?」
「言葉のあやだ」
先ほどまでとは別人のような満面の笑顔で、生徒会長はプレゼントを僕から奪い取った。
僕は伊勢と顔を見合わせた。
「え? あれ、誰? 生徒会長によく似た人?」
「いや蝉丸、見た感じ多分本人だ。俺の予想だと、待ってる間に酒を飲んだか、ヤバいクスリをキメたかだな」
「さっきまでストーカーからのプレゼントだって決めつけてたのに……。どうなってんだ? ねえ、小町先輩」
小町先輩を見ると、何だか妙な顔をしてスマホを開いていた。
何かを調べているようだ。
「どうしたんですか、小町先輩?」
「あ、うん。ちょっと、あのプレゼントの包装紙が気になって」
「包装紙……?」
僕が首を傾げた時、プレゼントを持った生徒会長がこちらを向いた。
「さて、委員長! 早速だがこのプレゼント、開けるぞ」
「……は、はあ!?」
僕と声をハモらせた伊勢が、口を尖らせた。
「ちょっと、何言ってんすか生徒会長。さっき俺が開けようとしたら、後が面倒だとか、和泉さんに危険が及ぶとか言って横から奪ったじゃないすか!」
「それは過去の話だ! 面倒などもうとっくに起きている! それに野球部エースが力いっぱい投げても無事だったものが今更危険であるわけがなかろうが!」
「それは僕がダイビングキャッチしたからでしょうが!」
いつもの仏頂面を垣間見せながら、生徒会長は僕の抗議を一蹴した。
「やかましい! 心当たりは全て空振りだった以上、もはや中身をあらためて手がかりを得るしか方法はないことなど自明の理ではないか! 少しは頭を使え、このデクノボウが!」
さんざんな言われようだが、何故かさっきの気持ち悪い賞賛モードよりホッとする自分が悲しい。
「いいから貴様は黙ってそこで見ていろ、雑用係! 生徒会長様に意見しようなど100年早いわ!」
「ここで生徒会長権限って横暴すぎでしょ!? 和泉さんからも何か言ってよ!」
驚いたように生徒会長を見上げていた和泉さんが、おずおずと頷いた。
「う、うん、そうだね。なんだかちょっと怖いけど、開けてみる」
開けるんかい!
「まあ、和泉さんが言うなら仕方ないな……じゃあ、危ないかもしれないから僕が」
「ちぇいっ!!」
僕が伸ばしかけた手を、生徒会長がスパーン!と叩き落とした。
「いてえっ! 本気のやつ!」
「持ち主が分からんとは言え、曲りなりにもプレゼントだぞ! プレゼントは贈られた相手が開けてこそ初めてプレゼントとして完結するのだ。そんなことも分からんのとは、この冷血漢め!」
「れい……」
なんなの!? 僕らがいない間に、生徒会長の中身入れ替わったの?
絶句する僕を尻目に、生徒会長は優しく和泉さんを促した。
「さあ、しのぶ。プレゼントを開けて……」
「ちょっと待ったあ!!」
大声と共に、委員会室のドアが勢い良く開いた。
飛び込んできた人影に、委員会室全体の空気が凍り付く。
息を切らせて立っていたのは――百高の女子用制服を着た「男」だった。
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