日常
1
シキは、今日も回されていた。
狭ぜまとした穴の中で、直立不動。自ら独楽に成りきってひたすらに回った。
ときには、雑に口の中に詰められて、バランスを保てなくなるときがある。そんな時には脱水槽をこんな具合に暴れまわる羽目になった。体をあちこちにぶつけながら回らされ、正直しんどい思いをした。しばらく回ってから、いつもシキの蓋を開ける女がやってきては、口の中の衣服をバランスよく整えて、再び回される。
決まって、バランスが悪かった日には、隣の部屋から声が聞こえるのだ。
「あの! ちゃんと回ってもらえません!? あちこちぶつかる音が、こちらまで響いてきているんですけど!」
洗濯槽ごときが、舐めた口を叩きおって……俺は王国の摂政になるはずの男だぞ。本来ならば、こんなガタが来てそうな箱の中に押し込められていること自体不愉快極まりないのに、この女ときたら、口うるさいことこの上ない。
シキはそう思っていた。
ん……? 女……?
「なぁ、つかぬことを伺うが」
「な、なんですか?」
「お前……元からそこに住んでいるのか?」
「……」
「なぜ黙る?」
「さて、洗濯物の第二弾が始まるみたいですよ!」
はぐらかされた。
何か訳がありそうだが……今は水を貯められて、グルグルと回転させているので、会話にならないだろう。
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