「質問ばかりで申し訳ないが……」

「なんですか？」

　雨が降っていた。

　雨は湿気とともに、風をも呼んでいた。嘘で固めた自分の身体に、容赦なく降り注いでいた。自分は洗濯槽である。そう言った手前、この雨に打たれて凍えている自分を慰めてくれるものは誰もいない。

　洗濯槽が冷えて凍える？　そんなことはありえない。寒いのは、別の理由だ。と、ソウは再び自分を偽り続けた。

「俺がいたところには、以前だれかいたのか？」

「……えぇ。いました。」

「それって……」

　思い出してしまった。

　本当は、何物にも代え難い記憶を。

　自分自身を偽ってきたことが、罪のように重くのしかかってきた。

　この雨は、きっと何かの罰に違いない。

　自分に正直になれ、辛くともそれが、前に進む道であると示唆している。

「私の……初恋の人」

　口から出た言葉。

　初めて正直に語った。

　その言葉の中に、「自分は人間である」という痕跡まで残して。

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