ソウは、これまでのいきさつと本心を語っていた。

 13年と7ヶ月の全てを打ち明けた。


 シキが語った、以前自分は王族であったという話。

 それが本当かどうかはわからない。冗談にしては、少しパンチが効きすぎだ、と、ソウは思っていた。しかし、どうもわからなかったのは、その話を思い出すたびに、何か心の中でモヤモヤするものが現れることだった。


 そのモヤモヤの正体に気がついたとき、ソウは再び生まれ変わることを決意するのだ。新しい洗濯槽はまたやってくる。その時、その洗濯槽も自分と同じような気持ちにさせないでほしい。そして、もし、自分がどこか別の世界に行ったとしても、自分のことを忘れないでほしい、と、その気持ちを打ち明けた。


 ソウは、差し伸べてくれる手が来ることを待っていた。


 確かに、どこか懐かしい雰囲気を、シキの中に感じていた。

 あれだけ無言で、失礼な態度を取っていたものの、初恋の人――とは、また、どこか違った世界で知っているような空気が、シキと過ごしてきた、無言の数ヶ月の中で感じることができたから。

 でも、今この世界を生きることが、ソウにとっては辛く苦しい現実であることに変わりはない。どんなに寄り添ってくれる存在がいても、自分の心までは救ってはくれない。

 だからこそ、ソウは差し伸べてくれる手を待っていた。

 必ず、記憶の片隅に残る、あの人のように大きくて温かい手が、自分を助けに来てくれる。もし、そうでないというならば……隣人に最後の思いを託すことにした。

 これが叶わないならば、隣にいる人は、私の救世主には成り得ない、と。


「だから、シキさん……私のことを、忘れないでくださいね……」


 忘れられること――忘れようとしている自分からそのことをお願いするのは、全くもって自分勝手なことだとわかっていた。それでも、自分を受け止めてくれる存在がいるのであれば、間違いなく自分は、今の生活を取るだろう。

 でも、自分を受け止めてくれないとするならば……。


 彼は言った。


「……断る」


 ソウは、次に生まれ変わる世界に、希望を託すことにした。

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