片鱗
7
落とせない汚れが、日に日に増えていった。
しかし、ソウはそれでもよかった。自分の人生の終わりに、孤独を感じずに済むと思っていたから。
けれど、それがどこかおかしいことに気がついたのは、いつからだったか。
全く同じことを繰り返している気がしていたのだ。
これと同じ会話を、以前にも話したことがある。
全く同じ場面を、以前にも見たことがある。
そう考えながら、クルクルと洗濯槽を回していると、自然とその回転にキレがなくなっていた。
「お前……大丈夫なのか?」
「……」
その声掛けに、どう答えようかと考えた。
今考えを巡らせていることを告げて、果たして彼はどのような反応を示すだろうか。
「まただんまりかよ」
「……大丈夫」
「そ、そうなのか、なら――」
ソウは、「私の代わりは、また来るから」と答えた。
その言葉の意味を、自分でも正しく理解はできていなかった。
どうにかして、その言葉の意味を伝えようと、伝えようと――。
「お前……何言ってるんだよ」
考えを深める前に、行く手を阻むようにシキの声が遮る。
しかし、ここでその考えをやめてはいけないと思った。
小鳥が飛んでいた。
枝に止まって、ソウを心配そうに見つめているのが見えた。
やがて枝から飛び立って、ソウを羨ましがらせていた。
羨ましい――?
なぜ――?
なぜ、私は洗濯機になったのだろう。
なぜ、小鳥に憧れているのだろう。
なぜ――なぜ――なぜ―――――。
再び、小鳥が戻ってきたのを見たとき、ソウは、思い出した。
あぁ、そうか――私は、ここから連れ出してくれるのを、待っていたのだ。
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