不穏

「お前……何言ってるんだよ」


 無言を貫いていたソウが、珍しく語り始めていた。


「あなたは知っていますか? 洗濯機は、今や全自動で洗濯もすすぎも、脱水も、全部同じ槽でできるらしいです。でも、ここの主がそういった洗濯機は風情がないからと言って、大事にこの洗濯機を使っているらしいです」


「それがどうした」


「あなたは、話し相手がほしいのでしょう? 自分の存在を認めてくれる人がほしいのでしょう? なら、私のような物静かな洗濯槽よりも、あなたのように激しく回転して、騒がしくて騒がしくてとてもじゃないですけど聞くに耐えないような賑やかさを持った、新しい洗濯槽がくるかもしれませんよ」


「なんでそんなことを言うんだ」


「わかりません。でも、このことだけは覚えておいてください」


「……」


「私はもう、長くはありません」

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