二層式の輪廻転生

繰り返された日常は……。

 暗い部屋がただそこにはあった。

 暗くて狭くて身動きも取れないが、それでも、なぜか悪い心地はしなかった。


 シキが脱水槽として転生しながらも、どうにかして元の世界に戻らなければともがくことすらなかったのは、妙な安堵がそこにあったからである。

 確かに、気まずい沈黙こそあったが、そこには思いやりと潤いと平和が約束されていた。1日のうち必ずは洗濯をする。洗濯など、人間だった頃自分のやるべき仕事ではないと思い込んでいたシキにとっては、新鮮な日々が続いたのだ。


 しかし、わからない。

 なぜ自分は、二層式の洗濯機となってしまったのか。しかも隣には、無口で生意気な女洗濯槽がいて、日々の充実感をただ共有している。


 そして、もっとわからなかったのは、こういった考えを幾度となく繰り返しているような、そんな気分になっていることだったのだ。

 それもそのはずだった。

 シキは、全く同じことを、もうすでに60年ほど繰り返していたのだから。

 シキの中にある魂は、もうすでに年老いてしまっていた。

 ソウは、それよりも更に10年ほど多くこの輪廻を繰り返していた。


 繰り返しても、繰り返しても、二人は同じ会話をした。

 繰り返しても、繰り返しても、二人は同じ沈黙を共有した。

 何度も同じ場所にやってきては、何度も同じをした。

 何度も同じ、選択をした。


 彼らが選ぶのは、過去への懺悔と、報われぬ欲求を満たすための沈黙だった。

 しかし、この沈黙を繰り返すうちに、決して歩み寄れなかった二人が得ることができたものがあった。

 それは、彼らがこの二層式の輪廻の輪を繰り返す以前には手に入れることができなかった安息である。


 その時間は、彼らにとって決して満足のいくものではなかったのかもしれない。しかし、疲弊しきっていた彼らの魂は、汚れてしまっていた心は、長い長い年月を経て、ゆっくりと浄化していくのであった。


 そして、その輪廻を終える時がやってきた。

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二層式は絶滅危惧種である。 青我 @untitled

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