第19話 俺達の冒険はこれからだ!

「あいつらは生き返った。勇者殺しの時接触しただろ。魔王と三人の人間。あの三人がアリー、エミリア、ルーカスだ」


 フード被って強キャラ感出してた三人。あの三人が英雄達だ。フードなんか被って謎の強キャラ感出してるよ。ププッ。なんて思ってたら、本当に強キャラだったな。


「あの三人がかつての英雄……」

「かつては仲間で英雄あろうとも、今は敵だ」


 そう、あいつらは敵となった。魔王を倒すために共に戦った仲間が今度は魔王と共に敵になりやがった。復活した魔王とかつての仲間まで倒せとかなんのジョークだよ。


「……敵となったからには今すぐにでも殺しに行かねえとな」


 かつて仲間だろうが、敵となったならすぐにでも殺してやるべきだ。あいつらは望んで敵となった訳じゃないはず。なら、今すぐにでも殺して、楽にしてやるべきだ。


「ああ、戦争は三年後にすることになりましたよ」

「……は?」


 三年後? 三年後ってなんだよ。桃か栗でも育てんのかかよ。


「彼らとお茶した時にそう約束しました。三年後に開戦。それまではお互い手を出さないと。魔王も生き返ったばかりらしくてでしてね、戦力の補充をしたいそうですよ」

「……おい、どういうことだ」


 敵が戦力を補充する期間を与える? 戦力が無えって言ってんなら今すぐにでも叩くべきだろ。


「いいじゃないですか。と言うより、これは願ってもない提案です。戦力が無いのはこちらも同じ。現状で開戦してしまえば、速攻で人間の負けですよ。あの四人にバラバラで結束のない人間が勝てる訳ありませんし」

「だからって、敵の戦力が整うのを待つのか?」

「あなただけで彼らに勝てるとでも?」

「…………」


 今敵の戦力は魔王と三人の英雄。それに対抗出来るこちらの戦力は俺とユリアスのみ。……勝てねえか。

 

「人間なんて個々では基本雑魚です。だからこそ、結束し、協力することが必要です。しかし、今の人間はバラバラです。教会の騎士団、各国の軍、冒険者ギルド、それぞれが個別に動いています。まずは、人間達の結束が必要です」


 騎士団はユリアスに服従している。各国の軍も表向きは教会に協力的だろう。だが、教会より自国の防衛へと戦力を割り振るのは分かりきっている。そして、冒険者ギルド。これは完全に独立し、どこにも非協力的である。町を魔物から防衛する程度はするが、国や教会への協力は一切しない。現状、人間の結束の欠片もない。


「更に、この世界には私達以外も大きな力を持つ者は存在しています。それこそ、英雄達に対抗出来るほどの力を持つ者が。その者たちを集めるのです。彼ら個々では魔王達に対抗出来ずとも、集まれば彼らに勝てるでしょう。かつての私達のように」


 三年あれば魔王は魔物達を全て統治するだろう。四百年前のように。しかし、人間も四百年前の様に結束が出来れば、魔王達に対抗出来るか。四百年前の人魔大戦のように。


「それに、今は分からないことだらけなのですよ。向こうの戦力はあの四人だけなのか、それとも他にもいるのか。魔王が自力で生き返ったのか、それとも誰かが生き返らせたのか。分からないことだらけです。今分かっているのは、四人が復活し、死者蘇生の術を持つ者がいるという事だけです」


 敵の戦力、魔王と英雄達の復活。死者蘇生を誰がやったのか。英雄達ですら不可能だったことを誰がやった? 魔王か? それとも、別のやつか? 別のやつなら、そいつにはどの程度の戦力が? 確かに分からないことばかりだ。


「結束以外にも敵の調査も必要です。敵を知り己を知れば百戦危うからずというでしょう」

「……あいつらと百戦もやりたくねえっての」


 少し冷めた茶を一気に飲み干し、席を立つ。うん、不味いな。お茶は日本茶が一番だな。


「各国の結束は私が呼びかけましょう。調査も騎士団に。冒険者ギルドの方は任せましたよ」

「楽な方取りやがって」


 さて、行くとするか。冒険者ギルドを説得。強力な力を持つ仲間を探す。この二つの目的を遂行するために。


「待って下さい! なんで置いて行こうとするんですか!」

「あ。いや、だって、お前茶菓子夢中で食ってて、話し聞いてんのかも分かんねえし、もう来ねえのかと」

「行きますよ! ちゃんとお話しも聞いてましたよ! 仲間を探しに行くんですよね!」


 なんだ来るのか。ヒロイン無しでこれから進めてくのかと思ってたわ。ミイナ完全に空気だったし。ひたすら茶菓子食ってたし。もう教会でぬくぬく生活でも送るのかと思ってた。


「師匠の仇だって取れてないんです。勇者殺しが魔王に連れ去れたのに行かないわけ無いじゃないですか!」

「そういえばそうだったな」


 完全に忘れてたな。勇者殺し君。彼に名前が与えられる日は来るのだろうか。連れ去られた勇者殺しを追ってミイナは魔王の元へって、ヒロインが誰だか分かんねえな。


「じゃ、行くか」

「はい!」

「では、教皇らしく見送りましょう。汝に光の加護があらんことをー」

「うるせぇ。ペテン師が」


 こうして俺達はユリアスと別れ、新たな旅へと歩き出した。



 「俺達の冒険はこれからだ!」ってなんか言いたくなるな。

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